遭遇ゴミ捨て場



「おや岡山くん一人でゴミ箱抱えてどうしました?苛められてるの?じゃんけん負けたの?ゴミの匂いが好きなの?」

「どれも違う…っていうかなんだそのしれっと交じってる有り得ない憶測、お前の目は節穴かゆきる」

 ふわふわした声音と髪の、まあ世間一般的に可愛いと評しても差し支えないだろう一人の女生徒に、大地は至極面倒臭そうな視線をやる。
 ゆきると呼ばれた少女は大地にとって厄介事ばかり持ち込んでくれる頭痛の原因首位を飾る存在だ。

 ゆきるの半分は煩わしさとクリームパンで出来ていると大地は常日頃思っている。賛同者は同じ委員会の約九割、つまり本人以外全員である。

「ふふふだってそういう風に見えたんだもん。というか節穴とはなんです失礼千万極まりない、遺憾の意です」

「だもんって言ったこいつッ…良いよもう俺は今忙しい」

「ああゴミの匂いが「そのギャグつまんねーから」

「チッ まあ良いです。ついでに連絡事項回しますが今日は当番の方が休みなので参加して欲しいと委員会から要請が」

「あー…解った」

「それから」

「?」

「岡山くんのクラスに変わった人がいるじゃないですか」

「……どの?」

「えっ ナチュラルに思い当たり過ぎる程変わり種ばっかり!? …いやあの、ひょーえくんって人なんですけど」

「兵衛か。あいつが何?」

「どんな方か教えて頂きたいんですが」

「珍しいなお前がそういう事訊くの」

「まあ…興味がありまして。個人的に」

 もしここで彼女が恋する乙女のような表情をして見せただけなら、大地は唖然と顔を引き攣らせただろう。しかし問題はその表情にまるっきり似つかわしくない空気感、それこそがゆきるの通常運転…
 主に我儘を発揮する際の様相だと、むしろ安心した。どうやら雪も槍も降る事はなさそうだ。

 しかしそれはそれで自分に頭痛が起こる事態の前兆だから、大地は温度のない双眸で一歩彼女に距離を置いた。

「うんそのにたりとどす黒い苛めっ子オーラ出した笑いを見る限り、多分教えてやらない方が兵衛の為なんだろうな。断る」

「そ、そんな事ありませんよ!? 私はただ欠席理由が物忌みだとか方違えだとか今時有り得ない事言い出したり、年中数珠アクセしてる男子がどんななのか気になっているだけですよ!? 決して喧嘩売ろうとか見世物に丁度良いかもとかそんなんではなく!」

「気持ちは解らんでもないが、残念ながら兵衛のそれは家庭の事情らしいから詮索してやるな。あと兵衛はそこ以外普通の良い奴だから」

「うぐっ…例え個人情報の保護に引っ掛かろうともこの胸の好奇心は止まらない訳で…!」

「そんな気になるなら兵衛と友達になればいんじゃね?」

「そうですよねっじゃあ手引きを宜しくお願いします岡山くん!」

「だが断る」

 すげなく袖にした大地にじとりと恨みがましい視線を向け、ゆきるはふくふくとした頬を子供のように丸く膨らませた。彼女の抗議の意である。しかしそんな意思表示だけで終わらないのがこの宮津貝ゆきると言う少女の恐ろしい所であった。

「私のお願いを聞いてくれないなんて罸が当たりますよ岡山くん…お弁当箱にみっちりとぐちゃぐちゃに崩した絹ごし豆腐仕込みますよ」

「お前が女子でも張り倒すぞゆきる」





食べ物悪用ダメゼッタイ

深入りしないのが双子弟。



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