続・遭遇進路指導室前
───ガラッ
「じゃかあしぃわイッキ」
ゲシッ!!
「ぷご!? こーちゃんどつくなよー」
突如として開いたドアから伸びた足が、座り込んでいたちょんまげの頭を直撃した。ひどく気怠げな声に含まれる独特のイントネーション、首都圏生まれ首都圏育ちの大気が密かに憧れていたお国訛り…関西弁だ。
姿を見せたのは赤鳶色、毛先に鮮やかな赤いメッシュを差した小柄な男、一目で解る不良だ。
「うおっ 進路指導室ってマジでヤンキーに説教したりすんだな、初めて見た。つか不良を初めて生で見た」
「そーなんや」
「いや光ちゃん光ちゃん、今の明らかに光ちゃんの事だからな」
「そーなんや」
「やる気なっ!? まぁ今日は結構長かったもんな。駄目だよ光ちゃん髪染めてちゃ、そりゃ小一時間も説教されるよ…あれ、光ちゃん一人?」
親しげな様子でちょんまげに光ちゃんと渾名されている不良は、ぎりぎりと奥歯を鳴らして殺気立つ。
「白川の奴一緒に呼ばれたくせに一人で逃げよった…お陰でエライしんどかったで。正確には一時間十四分やった」
「細かっ?! リアクション大雑把な割に細かいな光ちゃんっ!」
「うぉぉぉぉしかも生で関西弁聞いた!! 人生初生関西人!やべぇこの感動と興奮を今すぐ分かち合いたい!誰と分かち合おう!? そうだ大地くんと分かち合おう!メールメールっ」
興奮しきりの大気を横目に、持続しない怒りを捨てた不良は再び気怠い様相で二人を見やる。
「声デカイわ自分ら、廊下でガヤガヤ騒ぐなや喧しわ。なんやさっきの中まで筒抜けやったで」
「あっ すんませんなんかこのちょんまげに言い掛かり付けられて…」
「テメ…オレに責任転嫁すんなこら岡山大地の兄!廊下走ってたお前が悪いんだろうが!あ゙ぁ?」
睨みを利かせるちょんまげに怖い怖いとおどけて見せ、大気はもうアホの子だと結論付けた彼の怒気を軽くあしらう。しかしこのちょんまげ、やはり風紀委員の肩書があるだけで本質は喧嘩っ早いヤンキーのそれだ。
「風紀のくせにヤンキーと仲良しとか珍しいと思ったらお前、中身ほぼヤンキーじゃねぇか!しかもかなり駄目な部類の」
「駄目な部類ってなんだ!不良はそもそも最初から駄目だろうが!!」
「よしイッキ歯ぁ食い縛れや」
「あっ 違うよ光ちゃんごめん意味違う間違えた、今の駄目はやっちゃ駄目だろの駄目だからマジで」
「アホの子だなぁこいつ」
「アホの子やなぁ自分」
「ちっくしょうステレオで言うな!つか岡山大地の兄!お前だって似たり寄ったりのアホキャラのくせに!!」
「自分でアホキャラ認めとるでイッキ」
「ぐっ」
はい論破ー、このちょんまげはただのアホの子ー。勝ち誇った笑みで大気はちょんまげの頬に人差し指を捩じ込む。弟を馬鹿にされた恨み、忘れてはいない。
「俺はお前よりもっと狙い澄ましてるから。お前は天然の一番駄目なアホキャラだから」
「そーなんや」
「因みに俺の名前岡山大地くんの兄じゃなくて、相葉大気ですよろしこ」
「滝や。よろしゅう」
「滝さんね了解、下の名前はこーちゃんでオッケー?」
「光星や」
「お、カッケー」
とんとんと会話が弾む、不良然たる滝と服装違反の一つもない大気は意外と馬が合うタイプだった。置いてけぼり感に苛まれたのか、二人の間にちょんまげが割って入る。
「………いやっ!オレは天然じゃねーぞこら岡山大地の兄!」
「遅いわ」
スパン!
「あでっ …光ちゃん同じとこ叩くなよー」
「うぉぉぉぉああああ!ローテンションに突っ込む関西人カッケー!この感動と興奮を「くどいわ」
(お前なんで風紀のくせに滝さんと仲良いの?)
(縁戚なんだよ)
(マジか)
そして日常の風景が回り出す
えーこれでようやくにんやかににくみのプロローグが終わったようです(長) これ以後キャラ一人一人を主役にした単独の話で組曲と銘打って続きます。
勿論まだ登場してないキャラもいるのでこっちの形式では長文の隙間話とか番外編みたいな形でちょこちょこ更新してこうと思います。
何も知らなくてもそのまま読めるけどサイト全てに目を通してればニヤリと出来る事もある…みたいな作りになってるので(笑)
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