慟哭
「ルーファウス、少しいいか」
「こうやって話すのは何とも久しぶりですね…どうぞ」
私は応接間のソファに、親父と対面にそのまま腰掛けた。
「……これは新しいお前のIDカードだ」
親父は疲れたように真新しいそのカードをテーブルに置いた。
「これで第二社内秘までのサーチ権がお前に与えられる。アクセスパスワードは平常時、12時間ごとに変わるようになっている。緊急体制が通達されたら30分ごとに変わる。詳しい事はヴェルドが説明に来る」
私は満足してその説明を聞いた。
「プレジデント、ジェネシスが脱走した件……セフィロス達が動くのですか。ジェネシスがアバランチと繋がる可能性が?」
「ああ…それはセフィロスとヴェルドに任せた。──ルーファウス、私がお前に話したい事は、この神羅カンパニーの全体像をお前が把握するのは、非常に難しいと言う点だ」
「全体像? でもいずれ私が、全権利を引き継ぐんです」
貴方の代わりに。親父の代わりに私が、この一国の権力にも匹敵する巨大な神羅カンパニーを掌握する。
「会社は大きくなる為に、人には言えない事を沢山してきた…」
「今さら? そんな後悔を貴方がする必要が!?」
"後悔"と言う台詞に、親父は苦笑したらしい。
「他人に話せても、肉親には隠しておきたい話もあると言う事だ──しかしお前もこのIDを持ったからには、知る立場になった。様々な判断はお前に任せるが、ヴェルドやセフィロス達と話し合う事を忘れるな」
親父はそれだけ言うと、席を立った。私は完全に満足だった。やっと同じスタート台に立てたような気がした。
「第二社内秘の突破でこんなに貴方が狼狽えると言う事は、"第一社内秘"はもっとマズい情報があると言う事ですね──それを見れるのが今から楽しみだ」
親父は振り返って私を見つめていたが、ゆっくりと呟いた。
「ルーファウス……お前は若い。この時間の流れだけはどうしようもない事だ。いいか。誰も信じるな…絶対に誰もだ」
私も挑むように呟いた。
「セフィロスも信じるなと? ……プレジデント、貴方の事も?」
曖昧に視線を逸らして、親父はそのまま何も言わずに部屋を出て行った。
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