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慟哭



その二日後、待ちわびていたセフィロスとの連絡がやっとついた。

『ルーファウス、私だ。新しい部屋を借りたそうだな…場所をGPSで送ってくれ。今から行く』

副社長とソルジャーの関係ではないその第一声に、私の心はやはり沸き立った。苛々と待つだけだったこの三日間の焦りもセフィロスのこの言葉で帳消しになった。

「場所は一番街だ…端末に送る。レノ達は車の中で待機してる」

ジェネシスはその後、私の前に現れる事は一度も無かった。身辺にも怪しい動きは無い。
──やはり鍵はセフィロスだ。


セフィロスは一時間後、部屋にやって来た。少し疲れているのか、いつも無表情な彼の顔に、少し鋭いオーラが放たれていた。

「赤毛が飛び付いて尋問して来たぞ」

「レノ? ああ…ジェネシスの件以来、私の警護に躍起になっている。お前に尋問? 馬鹿だな。後で厳しく言い渡しておく」

「別に構わないさ…タークスとは先ほど合流した。ジェネシスは完全に姿をくらましている」

「……1st(ファースト)が束になっても見つからないか。もうミッドガル周辺にはいないと見ていいだろう」

「さあな……」

セフィロスが珍しく私の身体を引き寄せ、両腕で抱きしめてきた。少し驚いたが、私もセフィロスの久しぶりの匂いを確かめるように、同じように腕をまわす。セフィロスに抱きしめられると、私の中の男が顔を出す。他の誰でもこんな甘美な時など、持つ事は出来ない。


「アバランチのシアーズを知っているか」


私は彼の腕の暖かさに気を取られて、まだ会話が終わっていない事に一瞬、戸惑った。

「あ、ああ…アバランチの幹部の一人。彼が何か?」

「……ヤツをマークしろ。ヴェルドには内緒でな。面白い事が分かるかもしれない」

シアーズ。アバランチのトップ3の男だ。アバランチの幹部として、勿論その動向はタークスによって調査され続けられている。
しかしセフィロスがわざわざ私に耳打ちすると言う事は、何かまだ重要な事が隠されているのかもしれない。

「しかしマークすると言ってもヴェルドに隠れてというのは無理があるだろう」
「お前には忠実な手先となるタークスがいる」
「レノ達? しかしあれはあくまでタークスの要員だ……」
「ルーファウス、自分の駒はいつでも用意しておけ。組織ではない。自分で動かす事の出来る腹心の駒だ。自分に忠実である者を利用出来る立ち位置を常に持て。身体まで張ってきたお前には理解出来る事だろう」

セフィロスの影で私は微笑んだ。
レノ達をタークスとしてではなく、自分の駒として利用する。そのアイデアは私の処世術としてではなく、純粋に征服欲を刺激した。

「やはりセフィロスだな…勉強になる」
「お前の野心ぶりは見ていて楽しい。若さと野望──自分の望みを叶える為なら、策略や裏切りを躊躇わない素質がある」
「裏切り──か。何が裏切りか分からないが」

セフィロスは笑いながら、やっと私に口づけた。

「ラザードに会ったらしいな。どうだった」

その口調はすでに打ち解けた二人の時間に戻っている。

「面白い男だった。彼も相当な野心家だな」

セフィロスは目を細めて笑いながら、私を抱き抱えた。彼が笑う姿が私は好きだ。セフィロスは私だけの物だ。

セフィロスとはあの夜の事件の話はしなかった。ジェネシスとセフィロスの会話の真意も、私は尋ねる事はしなかった。まだ"駒"を持っているのは私だ。

その夜、私たちは遅くまで飽きる事なく、肉感的な行為を繰り返した。彼と繋がりながら、心のどこかでまたジェネシスが現れないかと期待していたが、その夜はひっそりと静かに過ぎていった。





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