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慟哭



そうか……私の部屋はジェネシスに破壊された。衝撃が大きすぎてそんな事も忘れていた。

「状況は、セフィロスの追跡次第と言う事か──」
「オレは若社長が無事なら、万事オッケーですよ、と。若社長が倒れた時は本当に死んじまったかと思って、猫轢きそうになった……」

一人で感極まっているレノに構わず、私は考えこんだ。

あの状況で、セフィロスがジェネシスに逃げられたのか……。セフィロスが? ジェネシスの逮捕の指令は既に三日前から出ていた。どこに潜んでいたのか、ジェネシスはかなり具合が悪そうだった。

1stのソルジャー同志の絆など、私には分からない。


『私を見捨てるのか』
あの言葉は──。


「若社長、服着ないと湯冷めしますよ。さ、プレジデントの所まで送っていきます」
「レノ、ラフな部屋着でいい。貸せ」
「えっ?」
「親父の所に誰が泊まるか。ここでいい。お前ももう寝ていいぞ。──ソファの上のゴミをどかせっ」


どうしても「ベッドで寝て下さい」、と拝み倒すレノの言葉通り、私はベッドメイキングもされていないクシャクシャなシーツに横になった。
邪魔な枕を幾つか床に投げて、私は暗闇で目を閉じた。

セフィロス。
本来なら、彼と過ごしていた筈の夜だ。
糞っ。
今度はいつ会える──。







翌朝、寝室のドアを開けると、既にレノとルードが待機していた。

「若社長、」

ルードが緊張して声を掛けてくる。
「ああ…、昨夜の事はもう聞いたな。状況は動いたか」
「ジェネシスはまだ見つかっていないぞ、と。あー、若社長、その、ルードが謝りたいと、」
私は二人がどいたソファに腰掛け、ルードを見上げた。
「どうした」
ルードは意を決したように、床に両手をつくとその大きな身体ごと頭を下げた。
「若社長…昨夜は、申し訳ありませんでした。職場を離れた上、若社長の危険な時に任務を果たせませんでした──辞職します」
そのままルードは動かない。
「ルード──おい、ちょっと待て。レノ、何だこれは」
「ほらな、ルード。オレは勝手にあそこで寝てただけなんだってば。帰れ、って命令したのは若社長なんだし、」
レノの言葉に少しむっとしたが、私は取りあえずレノの軽口に乗るしかなかった。
「──その通りだ、ルード。命令したのは私だ。早く立て。辞職だと? 馬鹿馬鹿しい。早く会社に行くぞ。おいレノ、もっとまともな服は無いのかっ」

ルードは片膝を上げ、遠慮がちに私を見ている。その目をみれば分かる。私に同情しているのだ。
「やっぱりよく似合ってるぞ、と。なぁ?ルード。若社長、男前が上がっただろう?」
「いや…えっと、似合ってます」

私はレノが貸したワイドネックシャツの袖のボタンを閉めながら、溜め息をついて立ち上がった。
「午前中に、新しい部屋を手配しろ。場所は本社ビルの近くだ。取りあえずの家具、服、食料、必要な物を揃えてくれ。スーツは会社に何着か置いてある。──レノ、お前は間違っても絶対に口を挟むな。一つでもお前が選んだらクビにしてやる」
レノは、まるで私の判断が分からないと肩をすくめたが、考えすぎないのはタークスの長所だ。器用にロッドを操って、「家具を選んだだけでクビになるなんて、割に合わないぞ、と」素直にドアを開けた。






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あきゅろす。
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