慟哭
ここは何処だ。私は目を開ける。グラグラと天井が回っているように見えた──。
「若社長!」
急に起き上がった私を支えたのはレノだった。この時ばかりは動けなくて、暫くレノの腕を借りる。私は眉間に指をあてて記憶を辿った。
「ジェネシスは…セフィロスはどうなった」
「今、1stが現場に直行してる途中で──若社長の無事は、会社に報告済みですよ」
現場に直行──。
「私はどれくらい倒れていた」
「まだそんなに経ってません。20分くらい?かな」
私は顔を上げた。
「ここは何処だ」
「オレの家ですよ、と」
私は目を丸くした。
「何でお前の、」
「あー、はいはい。若社長? オレの判断ですよ。その…着る物をお貸ししようかと」
私は驚いて、レノではなく自分の身体を見た。セフィロスと抱き合っていた途中に、私は上半身裸だった。
「その…色々マズそうだったんで……服、オレので良かったら貸しますよ? あ、寝てる間に調べたんですが、怪我はかすり傷。大丈夫だった。…ぞ、と」
「風呂は何処だ」
「えっ?」
「爆煙で真っ黒だ。シャワーを借りる」
私はそれだけ言うと、サッサとベッドを立ち上がった。
レノにこう何度も借りが出来るのが、堪らなかった。
「私がシャワーを浴びてる間に、状況をヴェルドに詳しく聞いておけ」
セフィロスは大丈夫だろうか──。
熱いお湯を浴びながら、私は両手で顔を覆った。
ああ──セフィロスなら大丈夫だ。誰も彼を倒す事は出来ない。神羅最強のソルジャー…。
ジェネシス。彼は何をしに来たんだろうか。
助ける──?
確かにそのような事を言っていたような気がする。セフィロスが彼を助ける?
どういう意味だ──。
私がシャワーを浴びて出ると、レノが待ってましたとばかりに洋服を差し出した。
「スーツは余り持ってないぞ、と」
見ると、大きく首元が開いた黒のワイドネックのシャツに、これも黒のデニムのスリムボトムス。さすがレノのチョイスだ。信じられん。私は余り人前で肌を見せる服は好きではない。
「ヴェルドは何と言ってきた」
「あ、はいっ。ジェネシスはまたも逃亡。セフィロスは負傷なし。現在、アンジールと組んで、ジェネシスを追跡中だそうです」
「アンジール?」
「ソルジャー1st、」
「あ、ああ…」
「それからヴェルド主任から伝言が。"副社長は今夜はプレジデントの所へ、避難下さい"だそうです」
「親父の所…?」
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