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慟哭



セフィロスは笑って曖昧に答えた。

「噂では、その第一級を超えるSS級の文書があるらしい……流石にそれは私も見た事がない」

SS文書。一体、親父は何を隠してるんだ?

「私のIDは何も役に立たないな……」
「そんな事はない。第二社内秘にも面白い情報が沢山載っている。ルーファウス、お前がいつどんな事をしていたのか、あれを見れば手に取るように分かるぞ」
「私の? そんな物が……見たのか」
「お前を抱くずっと前からな……」

暗闇の中で、確かに私の身体は熱くなった。

「それに第二社内秘には、ソルジャーの活動やタークスの任務内容が事細かに書かれている。面白いぞ。"神羅カンパニー"とは何なのか、お前にはとても勉強になるだろう」
「私は神羅の副社長と呼ばれていたのに……やはりただの、"プレジデントの息子"だった訳か……」
「お前がショックを受ける事は何もない。物事にはゼロから登る、階段がある。お前は精神的にとても不安定だな」

その慰めともつかないセフィロスの台詞に、私の意識ははっきりした。

「セフィロス、もういい。時間が勿体ない。ベッドに行こう」
「神羅の若社長は性急だな──タークスも苦労する筈だ」


笑うセフィロスに勝てる気がしなくて、私はその件についてはもう追求しなかった。ただ、セフィロスが私の手の中にあればいい。

かぶりを振って、セフィロスに抱き付く。ワインを飲んでた腕を掴んで、私は彼の唇に吸い付いた。甘く酸味のある唾液、私はもっと激しく彼を求めた。

舌と舌とが絡み合う。官能的な刺激に変えたくて、私は自分で自分の上着を脱ぎ捨てた。シャツも脱いでしまうと、肌に直接、セフィロスの感触が伝わる。私は口付けを繰り返しながら、セフィロスの腰を弄った。


『幾ら忙しくともミッドガルにいる夜は、ずっと私と居て欲しい──ただ、傍で寝るだけでもいいんだ』

そんな事を彼に言おうかどうか迷ったその時──。


ドオォーン!


耳をつんざく音がして、部屋中にもうもうと砂煙が舞った。

「何だ!? アバランチ!?」

私は耳鳴りにやられ、一瞬全くこの状況が分からなくなった。
砂煙に喉をやられ、ゴホゴホと咳き込む。


『若社長! 若社長!!』


ドアの方からレノの絶叫する声が聞こえた。遠く聞こえるのは、まだ部屋には入って来てないのか。何をやっている──。

「ジェネシス」

えっ。

「お前か──ジェネシス」

セフィロスの声が聞こえた。ジェネシス…?
私は腕を掴まれ、立ち上がらされた。長い髪が腕に触る。セフィロスだ。私は砂煙で目も開けられず、ゴホゴホと彼に寄りかかった。

「ルーファウス、ドアに走れ。タークスと逃げろ」

逃げる? 相手はアバランチではない。ジェネシスだろ? ソルジャー1stの人間だ。うちの神羅のソルジャー…。

「あ、…」

私は混乱した頭の中で、ジェネシスの今の立場を思い出した。ジェネシスは脱走犯として神羅に逐われる身となっていたんだ。そのジェネシスがここに現れ私達に攻撃を仕掛けてきた──。何とも言えない嫌な予感と共に、私はドアの方に進んだ。
瓦礫を踏んで、やっとこの部屋の壁が吹っ飛んだ事が分かった。手探りでドアを探す。レノがドアをドンドンと叩きながら、私の名前を叫ぶ声が聞こえる。


「セフィロス──お前は、ここで何をしている。私を助けもしないで……見捨てるのか」


ゾッとするような亡霊の声を聞いて、私は手首で息を殺し、後ろを振り返った。

ジェネシス。

私は目を見張った。

瓦礫の中で見る彼は、薄暗がりでも色素がなく灰色の塊に見えた。苦しそうに肩で息をしている姿は、必死に何かを訴えているようで、胸に異様な感触を覚えた。


「セフィロス!」
「ルーファウス、走れ!」

セフィロスの怒号を聞き、身体が動いた。ドアに駆け寄り、バンバンとドアを破壊しようとしているレノを目掛けた。

『若社長!』
「今、開ける! どけ!」

背後の1st二人は、異様な緊迫感に包まれていた。何だ、あの空気は。ガチャガチャと震えながら鍵を開ける。

「若社長!!」

そこに見えた蒼白なレノの顔よりまだ青く、私は震えていた。レノに目だけで合図すると、すぐさまそこを飛び出した。

「下に車があります !」

ジェネシス、あれがジェネシス…。
胸の内で何度も反復しながら、階段を駆け下りる。後ろから聞こえるのは軽いレノの足音だけ。

車に乗り込んで、私は息をきらした。すぐさまレノも乗り込み、車を発進させる。
猛スピードで走りながら、レノは何度もバックミラーで私を確認した。

「若社長、大丈夫ですか!? 怪我は!?」


私はハアハアと息を静めた。ダメだ。脂汗が出る。

「私は……大丈夫だ。ヴェルドに連絡しろ。相手はジェネシスだ」
「ジェネシス!?」

レノが驚くのも無理がない。私でさえ、まだ信じられない。

「セフィロスが残っている──誰か早く、彼の元へ」

情けない事に、私はここで意識を失った。







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