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慟哭



私は機嫌が良かった。自分の部屋にレノたちと戻っても、鼻歌が出そうなくらい快調だった。

「レノ、ルード。今夜の見張りはもういい。帰っていいぞ」
「そうはいきません。任務の内容は24時間です」
「レノなんかもう眠たそうじゃないか……セフィロスが来るんだ。お前たちより数千倍、頼りになる。明日の朝、迎えに来い」

レノは顔色を変えて、ガバッと私を見つめた。

「セフィロスっ? 若社長の所に!?」
「いいから帰れ。命令だ」

ルードがそのサングラスの奥からレノを見つめ、彼を説得するようにトントンと肩を叩いた。

「ちょっ、若社長!」

最後まで聞かずに、私は扉を閉めた。レノは本当にうるさい。

「ふう…」

セフィロスからは夕方、連絡があった。嘘みたいに嬉しかった。彼も忙しいだろうに。今日の事も含めて、色々話がしたい。そして彼に──。




何時の間に、眠ってしまったんだろう。セフィロスを待って──。


「セフィロス?」


薄暗い部屋の中に、確かに彼が佇んでいた。ゆっくりと椅子に寛いで、ワインを揺らしている。

「──来ているのだったら、起こしたらいいのに」

私は起き上がり、時間を確かめようとした。セフィロスは、以前渡しておいた私の部屋の鍵を手の先でカチャカチャともて遊んでいた。

「──タークスが一人、ドアの前でいびきをかいていたぞ。あの赤毛の新人、頑張っているじゃないか」

私は上半身を起こして溜め息をついた。

「あの馬鹿……帰れと言ったのに。何か、話したか?」
「いや、私の足音には気づかなかったらしい。グッスリ寝ていたよ」

1stの足音には気付かなくても仕様がない。私はそれ以上、レノを責めるのをやめた。

「待ってた……長かった。今夜は泊まって行ってくれ。親父の件、礼をしたい」
「プレジデントの件?──ああ、あのくらい何でもない。もうルーファウスも本当の神羅の仕事をする時期だ。プレジデントはお前を可愛がりすぎだな」

私は苦笑した。親父が私を溺愛した事など今までかつて一度もない。セフィロスがこんな風に親父を捉えていたなんて、彼は自分の肉親から充分な信頼を得て育ったのだろう。羨ましい話だ。

「ジェネシスの問題で明日から更に忙しくなる。彼のファイルにアクセスしてみたか」
「いや……私のIDが正式登録されるのは、明日の業務時間からだ」

セフィロスは椅子の上で脚を組み直し、笑った。
「まあ、第二社内秘に載ってるのは大した情報ではない──ジェネシスの個人情報も、大方、第一社内秘に移されているだろう」

私は耳を疑った。

「第一社内秘に? 第一社内秘とは…」

「神羅の最もタブーとされている情報だ。1stの情報は、大体そこに組み込まれている」

私は絶句した。タブー? 私が長い事待ち望んでやっとアクセス権を持てた第二社内秘が、くすんで思えた。

「それは1stだから第一級機密なのか? それとも1st自体がタブーだからなのか?」





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あきゅろす。
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