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【署長と看守】

注意!

◇署長と看守のお話
◇エロくない

以上を踏まえた上で読んで下さい

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「蓮」

下の名前で呼ばれ看守は眉を寄せつつ振り返った
見ると署長がにこにこと笑みを浮かべながら立っている

「...なんすか署長」
「家に来て料理を作ってくれないか?昔みたいに」

そう言われ看守は頭を掻きつつ答える

「嫌ですよ...大体名前で呼ぶの止めて下さい」
「何を水臭いことを。オマエも私のことを名前で呼べばいい」
「...仕事中は名字で呼ぶって決めたの誰でしたっけ...?」

呆れた声で言う看守に署長はそうだったかとおどけながら時計を見つめた

「もう勤務時間外だ。後は帰るだけだろう?蓮」
「...しつこいですね。俺にだって予定くらいあるンですよ?」
「今日は、ないだろう」

見透かすような言葉に看守は頭を掻いた
言い出したら聞かないこの人には何を言っても無駄なのだろう

「...わかりましたよ。いつでも行くと思わないでくださいね?」
「あぁ。勿論だ」

そうして看守は署長の家とは名ばかりの"屋敷"に招かれた
執事がドアを恭しく開き荷物を預かりそれをメイドが部屋へと運んでいく

ロビーの真ん中にあるシャンデリアがキラキラと光を放ち床に敷き詰められた赤い毛触りのいい絨毯に足が沈んだ

久々に見るそこに少しだけ感慨深げに目を細めつつ言う

「...変わりませんね」
「そう簡単に変わらないさ...お前の部屋も触っていない」

勿論掃除はさせているが、と続ける署長に看守は答える

「...そうですか」
「...敬語も止めていいんだぞ?」
「もう敬語で喋るのに慣れちゃいましたよ...」

言いながら看守は署長に続ける

「昔みたいにタメ効くなんてとても出来る気がしない」
「...それは寂しいことだ。」

署長は看守の言葉に少し拗ねたような表情をした
意外にも子供っぽいそれに少し笑いながら看守は言う

「もうガキじゃないんでね」
「私はいつまでもガキのつもりだ。大人になるなんぞめんどくさくて敵わん」

どこまでも自分本位な署長に少し呆れつつ言う

「署長...」
「そう呼ぶのは仕事中だけにしたまえ。自宅では署長じゃないからな」
「...正臣」

久々に口にする署長の名前に少し照れたような気分になる
対する署長は満足げに笑った

署長と別れ以前自身が"住んでいた"部屋のベッドに腰を下ろす
言っていた通り何も変わっていない

...懐かしいな

部屋を見渡しベッドのシーツを撫でる
その感触も部屋の空気もなにひとつ変わらない

ベッドに寝転がり天井を見上げる
ゲストルームであろうとも豪華な証明が瞳に光を散らした

服を着替えロビーに下りると署長に声をかけられる

「蓮、いつもの所だ。厨房と食材は好きに使いたまえ」
「了解です」
「私は腹を空かせながら食堂で待っているとしよう」

言いながら署長は食堂へと姿を消した
それを苦笑しつつ眺めながら看守も厨房に向かう

「蓮さん...お久しぶりです」
「おぅ久々」

コックに挨拶し看守はエプロンを着けながら言う

「今日は署長の飯俺が作るから休んでていいぞ」
「ありがとうございます」

コックは余計なことは聞かずにそのまま姿を消す

「さて、何作るかな...」

勝手知ったるなんとやらと手慣れたように冷蔵庫を開けた
一部の金持ちしか持ち得ないそれを羨ましいものだと思いながら食材を選ぶ

料理は自宅でも設備を整えている方だが署長の家ほどではない
これほど食材が豊富でそれも一級品ばかり取り揃えているのだ

好きに料理を作らせてもらえるのはありがたい

「お待たせしました」
「早かったな」
「簡単なメニューにしたんで」

言いながらテーブルに置かれた料理はどれも署長の好物だ
彩りも美しく上品で署長が普段通っているレストランのものとひけをとらない

「...まったく憎い事をしてくれるね。よく覚えていたものだ」
「...あの頃は毎日作ってましたからね」

看守は答えつつ自身も席についた

「まったく刑務所なんかにやらず家専属のコックにしておけばよかった」
「馬鹿言わないでください、ここ男少ないじゃないですか」
「それはそうだな」

他愛もないことを話しながら食事を口に運ぶ
ワインを少し飲みながら看守は署長に尋ねた

「...今日は、何かお話でも?」
「いや、別に。久々に君と過ごしたかっただけだ」
「...口説いてンですかねそれは」
「そう取ってもらっても構わない」

酒が入って少し酔っているようで署長はおどけた風に答えた
看守は上機嫌な署長を見つめながら言う

「...俺は、皇都刑務所でうまくやれてますかね...?」
「愚問だな。仕事はサボる。囚人と寝る。うまくやれているか?」
「すみませんね」

言いながら看守は気まずげに肉をフォークでつついた
署長はそれに笑い言う

「冗談だ。柴と正一ともうまく付き合っているようだし...外交はお前が強い」
「そう...ですか」

少しだけ嬉しそうな顔をする看守に署長は溜め息を吐いた

「...全く。未だにわからないな」
「何がですか?」
「私ともあろうものがお前を"猫"にしてやらなかったことだ」

署長の言う"猫"とは署長のお気に入りの人間達のことだ
性別は問わず誰も彼も美しい容姿をしており署長に絶対服従だ

ペットに近いが酷く大切にされており屋敷での地位も高い
署長直々の調教のせいか主人が大好きで酷く淫乱な者が多い

署長は自身の自慢の愛らしい猫達を思い浮べながら言う

「お前ほど綺麗な金髪と碧い瞳の男は見た事がない」
「悪いけど俺はそう可愛い奴じゃないんで」
「...そういう生意気な所が好きだから確か手を出さなかったんだったな」

調教してしまってはつまらないからな、と署長が続けた
笑いながらとんでもないことを言われるも慣れている看守は何も言わない

「あの頃は本当に大変だったものだな。」
「...感謝してますよ。こんな俺の面倒見てくれて生かしておいてくれたこと」
「あぁ...そういえば私も一つ聞きたいんだが」

看守の言葉に何かを思い出したように署長が言う

「まだ私の事を"殺したい"と思っているのかね?」

試すような、好奇心を宿した瞳に尋ねられる
看守はナイフに映った自身を見つめ目を細めながら答えた

「...いえ。」
「それは良かった」
「俺はもうアンタを殺さない、そう言ったろ」

先ほどまでの敬語を止め言う看守は少し怒っているようだった
署長はそれを見返し微笑む

「すまない。お前のそういう顔をもう一度みたいと思ってしまってね」
「...お先に失礼します。残さないでくださいね」

看守は立ち上がり署長に背を向けた
それを微笑ましげに見つめ署長が言う

「昔のように添い寝してやらんと寂しいか?」

冗談のように言う署長に看守は至って冷静に返した

「...部屋で待ってます。ムラムラしても襲わないでくださいね」
「少し位昔みたいに照れてみてもいいんじゃないか...」

残念そうに言うと看守はニッと男らしい笑みを浮かべた

「...そんなに初じゃないんですよ」

去って行く看守を見つめながら署長は頭を掻いた

「...まったく可愛げのない男だ」

言いつつもその口に小さく笑みを浮べる

本来自身に甘えなんでも言う事を聞く可愛いらしい猫が好みだ
けれど爪を立て言う事を聞かない猫も嫌いではない

猫と言うよりは狐か、と自身の中で思い直す
人を騙くらかすがどこか魅かれずにはいられない

「放し飼いというのも悪くないものだ」

一人ごち食事を片付けると署長は看守の部屋まで歩き出した

end

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最近存在が消えかかってる看守のお話^a^←
署長と看守の関係性はこんな感じ

添い寝するだけの関係((爆

色々意味深な会話ですが看守過去編にて明らかになる予定ですよ

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あきゅろす。
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