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205は言うと服の袖に腕を通しそれ以上結城の言葉を待たず装備を整え始める

「俺は英雄だろ、お前がそうしたんだ。お前だけは信じてくれるだろう俺を」
「…え、えぇ…もちろんです。ですが」
「結城、大丈夫だ」

205の目は結城の言葉を到底聞き入れるようなものではない
例の一件で205が強く責任を感じている事、長く己を責めていた事

それを知っている為結城はそれ以上強く言えず205も強引に戦場に出続けた

己が強くあれば、死ぬ人間は少なくて済むはずだと信じていたからだ

だがその予想は裏切られた

完全無欠の英雄、武神、そう過激に報じられその強さは信仰に近いものを得てしまったのだ
突き従う兵達は205を信じ、その戦いぶりに心酔しみな口を揃え言い始める

"大丈夫です!俺達死ぬのはは怖くないです"
"俺達あなたの為に死ねるなら本望ですよ!"

これは、205の望んだ言葉ではなかった

"英雄たる彼の為に!我々はこの命をもって道を切り開かんとする!"

高々と告げられた声に賛同するように彼らは猛々しく吠え死を恐れずに飛び込んでいく

それは意義のある死は恐ろしくないという妄信的な強さだった

205にはそれが恐ろしい
己の為と誰かが死ぬ事など望んではいないのに

予想もしなかった結果に205は酷く困惑した
誰も死なせたくないがゆえに英雄であることを突き詰めたはずなのに

選択を誤ったのか、ならばどの選択が正解だったのか
思考がぐちゃぐちゃになっていく



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