12 戦場の絶望などいくらでも味わってきたつもりだった それでも見知った相手を失えば心が押し潰されたように思う 強く責任を感じている様子の205を慰めようとしてか結城は告げた 「彼らはただ死んでいったわけではありません、貴方の分まで闘おうとしたんです」 「死んじまったら元も子もない…」 「205…」 悲痛な一件だったが、205は持ち直した 持ち直さざるを得なかった このように深く手を尽くして面倒を見た1隊が全滅することは初めてで動揺も大きい だがいつまでも嘆いている時間など世界は与えてくれない 人々は期待している、自らの軍を撃ち滅ぼされた獅子がその雪辱を晴らすのを それは悪意のない純粋な期待 復帰後の205の活躍はその期待に十分に応えうるものだった 味方さえ恐怖するほど、敵を一人も生かして帰すまいとする気迫は健在 その戦いぶりに以前にもまして鬼気迫るものがあったのは205が自身を責め、追い詰めた結果だ 国は英雄の復帰とその凄まじい戦いぶりを歓迎した 熱狂的な盛り上がりにまた水を差せばあのような悲劇を起こしてしまうかもしれない 負けることなどもう許されない、 己が動けなくなればまた誰かが死ぬ 勝利しか許された道などない 205の思考はいつしか昔父に刻まれた恐怖に似たものに支配されていた 失敗の許されない完璧を常に求められる恐怖に 戦場で傷を負っても205は以前のように休息を取ろうとはしなかった 鎮静剤を撃ち、痛みをごまかしまた戦に出る 「…クソ…最近鎮静剤の効きが悪いな」 「205……やはり、しばらく休んではいかがでしょうか」 「いや、俺のこんな姿を世間に知られちゃまずい」 [*前へ][次へ#] |