6 強い立場に生まれ弱い立場から搾取することを当然とした振る舞い だから今目の前のこの男は205も当然応じると思っているのだろう その笑顔に張り付いた自信の滑稽さに205は笑いも出ないなと言葉を返す 「悪いが俺は信用のおけない男と組むつもりはねぇ」 「な…何?正気か。庶民には違いがわからないのかもしれないがあの男は成金の家の出なんだぞ!」 「知ったこっちゃねぇ。俺はあの男を信頼してるんだ」 結城は身分に対してのみ評価をする人間を嫌悪している様子を多々見せることがあった その理由を垣間見た気がして205は気分の悪さに舌打ちを零す 205が貴族というだけで彼を色眼鏡で見た時彼はすぐにそれを見抜いた "慣れていた"のだと今更になって気づく 貴族にも貴族を見下す連中がいて結城は常にそれと真っ向から笑顔で闘ってきたのだろう 庶民であるよりもよっぽど貴族と接する機会も多いその身分 その苦労は想像するに難くない 結城のそれまでの人生を思い答えた205に櫻田は失望をあらわにした声を出す 「……やはり所詮は庶民か」 「何とでも言えよ」 「いいさ、君みたいな頭のよくない野蛮人には確かに下品な成金がお似合い…」 言いかけた櫻田の言葉は最後まで紡がれることはなかった それは205が力任せに思い切り櫻田を殴りつけたからに他ならない 貴族に怪我を負わせたとして205は祝いの席だというのに屋敷地下の懲罰房に入れられていた 連帯責任として結城も共にいるがその声色は罰を受けていると思えない明るさに満ちている 「ふふ私の事結構好きなんですねぇ、205」 「……チッ」 「肯定と受け取りました。………すみませんね迷惑を」 むしろ謝るのは205の方なのだが事情を知ってか結城に先に謝られてしまった 檻の中で背を預け合うようにして座っていた為結城の顔は見えない 今は顔を見て話すべき気がして205は結城に向き直りその肩に手を置く [*前へ][次へ#] |