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支倉と仲が良かったと知れている205が支倉の荷物を整理する役を任されたのは自身としても妥当に思えた
あの男にはもう身内がおらず、それならば自分がその役を負うだろうとある程度予想していたからだ
何度ともなく訪れていた支倉に与えられている軍の部屋は相変わらずあの男らしく必要最低限のものしか置いていない
それでも、あの男との懐かしい記憶を思い出させるのだから性質が悪い
「…大丈夫、昔に戻っただけだろ」
205は自分に言い聞かせるように小さな声で呟く
努めて淡々と、事務的に荷物を整理していると机の引き出しに1通の封筒と見慣れない小箱があることに気が付いた
「……手紙、か?」
宛名を見ると"弟子へ"と書かれておりそれが自分宛であることに気が付き205は思わずそれを取り落としそうになった
握りしめた手紙を焦りながら開封し中身に目を通す
まずはじめにお前にはすまないことをした、とよれた字で綴られたその手紙を205は震える手で読み進める
"師としてお前の成長を喜ばしく思う、お前と過ごした日々は楽しいものだった"
"なんてことないもんだが、捨てる気にもなれんのでこいつを受け取ってほしい"
小箱の方だろうか、と思い至り205はその掌サイズの小さな箱を開ける
そこにはどこかで見たような銀色のピアスが一つ入っていた
「………これは」
それをみて以前に聞いた話を思い出す
支倉は紛争地帯で生まれたために親のいない状態で流れの軍人達が親代わりだったことを話した
そういった子供たちが少なくなかったため独自の風習が出来たこと
それは軍人たちの間で特に面倒を見ていた者がその子供に身に着けていた装飾品を託すというものだ
もし205の予想が間違いでないのであればこれはおそらく支倉の身に着けていたものだろう
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