12 気が付けば陽は沈んでおり、205は見知らぬ林の中にいた 遠くでまだ鳴っている爆撃の音に肩をびくつかせながら大きな岩に背を預け息を整える 「…はっは…っはぁ…っ」 心臓がバクバクと鳴り続け息が酷く苦しい 体はガチガチと震えが止まらず体中にできた小さな傷がじくじくと痛んだ ようやく息が落ち着いてきたものの205は結局戦場に戻る事が出来ずただ遠く光るものを見つめる 人があんなに簡単に死ぬなど、そうは思っていなかった もっと抵抗ができるものだと思っていた 目にしたのは一瞬、たった一瞬であたり一面が地獄と化したのだ …あれは、なんなんだ…あんな…風に俺は…俺も…死ぬ…? 想像すると血の気が引き息が止まる気がした あまりにも生々しい黒い塊を思い出し205の胃がびくんっと痙攣する 咄嗟に口元を抑えたが胃からこみあげるものに押し負けてそれを吐き出してしまった 「ぁ"っごほっかはっおぇ…っふ…っぅ"…」 指の間から胃液と昼に食べた配給のスープの消化しきれていないものが酸っぱいにおいをさせながら溢れ、落ちた 喉がひりつき何度も咳をしながら205は息苦しさに声を上げる 「あ"っこほ…っ…は…はぁ…」 口を拭い唾液と吐瀉物にまみれたものを205は虚ろな瞳で見つめそれ以上動くことができなかった 強い恐怖心から寝ることもできず一晩中そこでうずくまるようにして、朝を迎える 「オイ、お前!どうした!生きているのか!?」 「…っ!ぁ、あぁ…ぁああ…」 通りかかった皇都の援軍に保護される形で205はなんとか駐屯地へと帰ることになった あまりに使い物にならない為、新兵の部隊全体が撤退を余儀なくされたと知ったのはあとのことだ 初参戦は無様な結果に終わりあまりに多くの新兵がたいした成果も残せず命を失った [*前へ][次へ#] |