7 男はため息をつきながら諭すような口調になった 「言っただろ…弱い癖に粋がるのはスマートじゃねェ…つまらない意地で得られるものはねぇぞ」 「ガキ扱いするな…俺は子供じゃない…子供じゃ……」 「ガキだろうが。」 言い募る205の言葉に上からかぶせるように男は低く冷たい声で再度告げた 「…違うと思いたいなら好きにしろ。どうせ時間の問題だ」 「…」 「いずれ知ることになる。その時が来るまでテメェはずーっとガキのままだ…まぁそれも戦いに生き残れれば、の話だがな」 男はそれ以上205に手を貸そうとはせず背を向けるとそのまま部屋から立ち去った 残ったのは妙な、敗北感と痛みだけ 周りに倒れた同期達が起き上がる前に、と205は痛む体を引きずるようにして自室へと戻った 硬いベッドに座り最近では嫌に慣れてしまった自身への手当をしながらぼんやりと男の言葉を脳内で反芻する "自分が世間知らずで無力でひとりよがりな正義を気取ったガキ…お坊ちゃんって自覚、ねぇんだろ" 言い返す言葉を持たなかった自分を思うと嫌に心がささくれ立つ 言われた内容に自覚がまったくなかったわけではない けれどあんな自分を何も知らない他人に知ったように語られるなどごめんだ 「……クソ…ッ」 悪態をつき歪めた顔の傷がズキリと痛み205は頬を撫でため息を零す 明後日は初陣だ 散々殴られ、蹴られはしたものの訓練で日頃鍛えられている為か折れたりなど、致命傷にはなっていないことに安堵の息を吐き出す 205は己の手を見つめ思う …やっと意味のある戦いができる、俺はそのためにここに来たんだ 厳しい訓練や同期の心無い仕打ちに耐えたのはそのためだ 自分の行いは、ここに来たことは間違っていない、そう証明したかった [*前へ][次へ#] |