2 自分が屈する理由などどこにもない 間違っているのはお前らだ、とその瞳はどこまでも歪みなく男達を見つめ返した だが205のその自分を曲げない物言いや態度はかえって男達の劣等意識を煽るものにしかならない これだけ痛めつけているのに、どうしてこの男は泣き言一つ言わないのか ここまでくるともう意地のようで、とある日などは数人がかりでその体を押さえつけひたすらに殴り続けるなどした それでもやはり205はただその金色の瞳で男達を見つめ返すだけだ 「っんだよこいつ気持ち悪ィな!」 「…ごほっ…満足…したか」 「黙れ!喋るんじゃねぇ!」 壁にもたれて男を見上げる205の顔を足で蹴り上げ男は息を荒げた 「…こいつ裸に剥いて食堂に立たせるか?恥かかせてやろうぜ」 男が意地の悪い顔で笑う 醜いな、と205はそう己の中で男を評しながら舌に血の味を感じながら告げた 「…そんなことで俺が恥に感じるとでも…?人として恥ずべき行為をしているのはどっちだろうな」 「黙れッ黙れよ!」 「オイ、さすがにやりすぎなんじゃねぇ?」 「止めんじゃねぇよこいつ気持ち悪ィんだよ!普通じゃねぇ!」 205は口元の血を拭いながら鼻を鳴らした 普通じゃない、などとどの口が言えるのか 何の危害も加えていない無抵抗の人間を痛めつけそれでもなお自分がまともだと言い張るつもりなのか 口には出さないものの205はそう考える だからこそ、その口には馬鹿にしたような笑みが浮かんだ 205は己が他人から見てどれほど異様に映るか理解していなかった 父に抑圧され、感情を殺し耐えることが体に染みついた205は普通の人間であればこの仕打ちに耐えられないものなのだと知らない 本来泣いて許しを請いへつらうものなのだと知らなかった それをしたのは父を相手に、他人を人質にされた時だけ、己の為にそれをする考えは205の中には存在しなかった [*前へ][次へ#] |