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傾向/物語中心/過去編/暴力/流血
食堂での一件を境に、205に対する周りの態度は一変した
悪く言えば、ストレスのはけ口としての都合の良い標的に選ばれてしまったのだ
"あいつには何をしてもいい"
そういった暗黙のルールが狭い集団社会の中で築かれてしまった
訓練時も、休憩も、食事時も205を見つければ周りはいらぬちょっかいをかけてくる
最初に絡んできた集団だけではなく、誰もが舐めたような態度をとり205を小突き、わざとのように肩をぶつけ悪態をついた
それ位ならまだ可愛いものだったが訓練着を便器に浸され、座学に使う教本を破かれ捨てられるなどには渋い顔にならざるを得ない
こんなくだらない他人の幼稚な悪意に気をとられている場合ではない
国を救うために戦うべき力を身に着ける必要があるのだ
訓練に余計な妨げになるものなど困る
だが205はちょっかいをかけてくる者たちを殴る気にはなれなかった
この体はそんな事の為に鍛えているのではない
殴るべきは敵のみであって、彼らは敵ではなく本来仲間になるはずの人間だ
問題のある行動、と感じ一応教官には報告したがただめんどくさそうにため息をつかれただけに終わった
「…君のような優秀な人間が、周りとの友好関係を築けないのはどうなのかね、それくらい自己管理しなさい」
返ってきた返答はそういったもので要するに自分でなんとかしろ、という事だ
期待はしていなかったが予想をさらに下回る返答だった
すでに問題は自己管理で済む話ではないのだがこの教官にはいくら説明した所で無駄だろうと205にはわかってしまった
話を持ちかけた直前までは気のいい顔をしていたのに報告を受けた直後あんな人を見下すような目に変わった男だ
面倒事を持ち込むな、と思っているのが表情からありありと伝わってくる
それ以降205はこの件に際して一切教官には話すことをしなかった
今まで通りただちょっかいをかけてくる男達に同じセリフを繰り返すだけ
「…俺にかまってる暇があったらもっと己を鍛えたらどうだ」
どんなに何かをされても205は態度を変えなかった
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