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言われるがまま人に会い、食事をし、言われるがまま渡された書類に印鑑を押す
それがどういう意味を持つかなどわからないしそれをわかろうと思いすらしていなかった

それだけしていれば人々は自分を英雄のようにもてはやしてくれるのがあたり前で文句を言うものなどいないのだから当然だ
帝はそんな退屈な毎日を過ごしていたが最近、その退屈を紛らわせるものができた

「帝、あの方がいらっしゃっています」
「…!…通せ…あと、わかっているな」
「はい、私は扉の前で待機しておりますのでごゆっくり」

下がる召使とは入れ違いにドアが開く音が広い部屋におおげさに響く
帝は脱いだ靴を履く時間すら惜しく裸足のままベッドから降りると扉まで駆けた

「イチ!」
「…お久しぶりです、帝」
「本当に…久…々……ぅ…は…はぁ…っはぁ…」

普段走ることなどしない帝は小さな胸を上下させながら息切れの苦しさに顔を歪める
それをまったく仕方がない、といった顔をしながら肩をさすり男は嗜めた

「いけませんね、帝がこのような」
「ごめ…っ…うれし…かった…からぁ…」
「私と会えるのをそこまで心待ちに?」

それは光栄だ、と柔らかく微笑む男に帝は顔を少し赤らめながら口をひらいた

「本当に来てくれたんだね」
「約束をしましたから。私は約束は破らない男ですよ」

表情を弾ませる帝の頭を撫でる男はー壱陽はポケットを探った
帝の視線に合わせて身体を屈め取り出した小さな箱を恭しく手渡す

手渡された小さな箱をじっと見つめ帝は視線をそろりと壱陽の顔に移した
開けて大丈夫、という意味の微笑みを受けて帝は表情を輝かせると包みを開け声をあげる

「チョコレート!ありがとぉ!…僕これ大好き」
「お土産です。バレたら怒られてしまうので秘密にしてくださいね?」


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