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ため息を零し壱陽は低く硬い声で続けた

<別に彼がいいというわけではないさ。扱いやすいというだけだ>

「…俺が扱いにくいと?」

尋ねるその声には遠慮のないトゲが滲んでいた
壱陽はやれやれと呆れた様子で警告とも取れる言葉を告げる

<命令違反が多すぎる、君がコントロールできない人物だと判断されれば私でなくても君を処分すると言い出す人間が出てくるぞ>

「…これを使えば処分なんてできないと思うけど」

<君は幼いな…彼らが君に対する対抗策を講じていないとでも?>

それを聞き形のいい眉を潜めながら"彼"は受話器を耳から離し見つめる
壱陽に告げられた言葉に動揺を隠しきれないようでどう応えるか考えあぐねている様子だった

ようやく、と言ったように絞り出した言葉には先ほどのような強気な姿勢はない

「…嘘だろ…?まさかもう開発したっての」

<いい人材が揃っているからな…毒を作るのにワクチンを作らない学者はいないだろう?>

当然というように答えられ"彼"は唇を噛み締めた
言葉を発さない"彼"に壱陽はまた愉しげな声色に戻り言葉を吐き出し続ける

<…勿論息子にも対策はされている。君が私を脅すことなど不可能だ>

「…チッいけすかねェ…いいぜわかったよ。アンタらの言うことを聞くさ…どうせ俺には何もない」

椅子の背もたれに頭を預け天井を見上げる"彼"
目を閉じ次の壱陽の言葉を待つ

<…いい子だ。君がいい子でいる限り私は君の味方だから安心してくれていい>


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