3 壱陽の演説が行われる少し前のこと 署長の発表で重苦しくなった場の空気はしばらく続いていた 「…マジかよ…」 食堂の隅でテーブルに肘をつきながら58は呟く 07に置いてきぼりをくらったあと 保留になってしまったままの想いを持て余しベッドでただ天井を見つめていた ダンスパーティに参加する気にもなれずその音楽をただぼんやり聞き流していた所 響き渡る盛大な警告音に飛び起きそして今に至る もう少し期間があったはずの狩りの予定が早まったと聞き囚人達は皆気が気ではない いつもより大規模に行われるとの前情報を皆知っているからだ 重苦しい沈黙を破るかのように58が手を上げた 「署長さん…そいつぁどういうことなんですか?」 「…言葉の通りだ。皇都からつい先ほど連絡があった」 「ただでさえ早まった狩りをさらに早めてくるってことは何かあるんじゃ」 署長は何も言わずただ58の言葉を聞いていた 期間についてすでに掛け合ってはいたのだろう 署長の力をもってしてもどうにもならなかったということだ 「…すまないな。君たちにはなにも説明できない。決定事項だ」 「…了解」 58は特に追求することもなく引き下がる Bブロックの囚人達はそれにならい黙った者が多かったが他ブロックの面々は未だざわついていた [*前へ][次へ#] |