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side story
飛行機雲
※ナイトレイの昔の話。
“僕らの未来”を読んでいない方は注意!














遠くでドーンッと小気味よく爆薬の破裂する音がした。
多分アベルが放った爆薬だろう。

今日は天気もよく、気温も高かった。
汗の染み込んだ軍服がいつも以上に重く感じられ、気が滅入る。
まぁもともと、戦時中に気が滅入らなかったことなんてないのだが…。

カインは遠距離用のライフルで遠くの敵を撃ち抜いた。

今日の任務は国境の橋の破壊。
国境ということもあって敵も比較的手薄なため、人数も少ない。
粗方敵も倒し、後は橋を破壊すれば任務は終了。
しばらく任務もはいってないからのんびりできるだろう。

そんなことをぼんやりと考えながら、橋にむかった。
もちろん、いつ敵があらわれてもいいように銃は構えたまま。
一瞬の油断が命取りになるのだ。常に気を張っていなくてはいけない。

戦場にいて気が休まることなんてない。
常に前をみて、後ろを見て。周辺を見渡す。

この緊張感に心がやられてしまう者も少なくはなかった。
一瞬も目を離せないのだ。
ましてや…


「カーインっ」


バサァッ

目隠しなんて、とんでもない。
急に目の前が真っ暗になった。
焦りはしたが、その焦りは聞きなれた間抜けな声に一掃される。
頭に被せられた汗のしみるアベルの匂いのする軍服をバサリと取り去り、上を見上げた。
アベルはいつものように木の枝に足を引っ掻けてぶら下がり、カインを見下ろしていた。
ドアップでアベルの顔しかみえない。

「あっつくないの?そんな着込んでさ」

「お前はなんで戦場で軍服脱いでんだよ」

「暑いから」

しれっと言うアベル。
まだ任務中でしかもこの場所はアベルの管轄外。
いきなり現れてからかいにきたのかなんなのか。

「なんの用だ…」

「あ、そうだった…見て見てこれ!」

グルンと木の枝に座りなおし、空を指差すアベル。
相変わらず猿みたいだな、とカインはその姿を目で追って、しぶしぶ指先を見上げた。







一瞬、その青さに目が潰れるかと思った。


真上から浴びる日光に、焼け焦げるかと思った。


見上げて吸った空気が、体の隅々までいきわたるかのようだった。






見上げた空には一本の白い線。
空の端から端までのびている。









「……飛行機…雲か?」

「そう、気付いてた?」

アベルは太い木の枝に座り足をブラブラとさせて空を見上げながら言った。

「いつもは戦闘機の黒い煙ばっかなんだけど、今日のは正真正銘、飛行機雲」

アベルはスウッと指先を飛行機雲をなぞるように動かした。
2人の真上にあるそれ。カインはそれをぼんやりと眺めて、ふと、思った。

まるで…


「まるでさー」

カインが心の中で呟くのと同時に、アベルも口を開いた。
それに驚き、そして不安になった。

……まるで…



「まるで、空を真っ二つに割ってるみたいだよね」





ガシッ。

無意識だった。
アベルも驚いていたし、自分も驚いていた。
しかし気付いた時にはもう遅くて、カインに足を捕まれたアベルはバランスを崩して木から落ちていた。

「うわっとと……!」

「あぶな…」

ドサッ!!

「いってー……」

「わ…悪い…」

アベルはカインの上に落ち、カインもそれをなんとか受け止めたため二人で地面に倒れはしたものの怪我はなかった。
カインのいきなりの行動にアベルは驚き、不思議そうな顔をしていた。

「どうしたんだよカイン」

「いや…」


カインは無意識にしてしまった行動に驚きながらも、少し安堵していた。


まるで……

まるで飛行機雲が、二人を引き裂いているように見えた。


そう思うと、急にアベルがどこか遠くに行ってしまうような気がして怖くなった。
だから…とっさに足を掴んだ。

「カイン?」

「なんでもねぇ…」

そんな訳がないとわかっていた。
わかっていても…怖かったんだ。

「…俺は別にどこも行かねぇよ?」

「は?」

心を見透かしたようなアベルの言葉に、カインは動揺し、顔をあげた。

「どうせ俺らのこと引き裂いてるみたいだ、とかおもったんだろ?大丈夫大丈夫」

「なんで…わかったんだよ」

アベルはカインの上から降り、立ち上がってカインに手を差し出した。

「俺も、ちょっと思ったから」

照れ臭そうにむくれるアベルに呆気にとられていたカインは思わず笑った。
そして差し出された手を握り返す。

「まぁ俺ももうこっちサイドだし?」

グイッとカインを引っ張りおこし、また空の飛行機雲をなぞるアベル。

二人の間にあった飛行機雲をまたいでアベルはこちら側にいた。

「お前おいて、消えたりなんてしねぇよ」

「……わかってるよ」











そうだ、俺らは仲間。

共に生きよう。

……いつまでも。














いつか死別するその時まで。














end

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大分いらないとこ消した結果、わけのわからない話に…。
やっちまった感満載です。



あきゅろす。
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