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side story
can't sleep



時計の長針と短針がちょうど12のところで重なっていた。
ナイトレイは急に水が飲みたくなって暗い廊下を一人歩いていた。
クアッと欠伸をし、ガリガリと頭を書いてとぼとぼと歩く。
しかし厨房の近くまでくると突然足元がうっすらと明るくなり、寝ぼけた頭でナイトレイは顔をあげた。

「消し…忘れたのか…?」

厨房には電気がついていた。
閉店後消し忘れたのか?いや、確かに消した記憶はある。では……泥棒…?

寝ぼけてぼーっとしていた頭は覚醒し、そろり、と壁に背をあずけた。

泥棒なら、一瞬で背後に回り込み、押さえ込もう。
武器を持っていたなら、大声をあげて八咫あたりを起こせばなんとかなるはず。
ナイトレイはごくりと唾をのんで、厨房をのぞいた。

そこには、予測されていた不審な姿はなく、変わりに見慣れた少年の姿があった。

「なんだ、ジンか…」

「?」

椅子に座り、ぼーっとしていたジンは顔をあげてナイトレイを見上げた。
ナイトレイはほうっと肩を撫で下ろしてジンの向かいに座った。

「どうした?寝れないのか?」

「……はい」

うつむいて、頬杖をつくジン。
ナイトレイはよしよしと頭を撫でてやった。

「子供じゃないんですから…」

「まだ子供だろ」

ジンがムッとする。
その顔を見てナイトレイは薄く微笑みポンポンと頭を叩いた。
ジンはむーっと顔をふくらませ机に突っ伏す。

「子供じゃ…ないです」

「子供だな」

ははは、と小バカにしたようにナイトレイは笑った。
その態度が気にくわなかったジンはぬっと顔をあげてナイトレイをにらんでいる。

「あんま怒んなって、興奮して寝れなくなるぞ」

「怒らせてるのは誰でしょうねー」

そういうとジンはまた突っ伏してしまった。
ナイトレイはジンの髪を撫でつづける。

「誰だろうなー」

「誰でしょうねー…」

規則的に、優しく髪をすくその手。
最初からその手に嫌悪感なんてなくて、気持ちがいいその仕草にジンは目を閉じた。

「(懐かしい…)」

ナイトレイは昔のことを思い出していた。
昔は寝れないと、俺の部屋の前で、タオルケットやら枕やら、ぬいぐるみを抱いてうずくまっていた。
絶対部屋に入ることはなくて、トタトタと小さな足音をたてて部屋の前に訪れる。
それに気付いてからというものの、どんなに熟睡していてもこんなに小さな足音で目が覚めるようになり、その度に部屋の前でうずくまるジンを抱き上げて一緒に寝ていた。
こうやって髪をすいたり、体を優しく叩いてやるとこいつはすぐに眠りにつく。
今でもそれは変わっていないらしく、静かな厨房にすーっと小さな寝息が響いた。

ナイトレイはそっとジンを抱き上げて、ジンの部屋のベッドに寝かせてやった。
布団をかけて、自分も部屋に戻ろうとするとクンッと服の裾を引っ張られて振りかえる。
ジンはしっかりとナイトレイの服の裾を握っていた。

「ほら、子供だろ」

ナイトレイがその手を戻そうと、そっとジンの手にふれようとした、その時だった。


グンッ


「え?」

いきなり力強く引っ張られ、バランスを崩してベッドに倒れこむナイトレイ。

尚もしっかりと服の裾は握られており、引き離すことはできない。

「(あぁしまった…)」

ナイトレイはジンの横に横たわりながら思った。
こんなに近くに成長したこいつの姿があっては寝付くに寝付けない。











今夜は眠れない。












ナイトレイは腹をくくって、ジンの寝顔を眺めた。





end


==========
6/12は恋人の日!
前作に引き続きリクエストいただいたので書いてみました。
そして思い出した。
このサイトのメインCPは
ナイトレイ×ジンでした。今更
これからもこの二人をよろしくお願いします。



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