[携帯モード] [URL送信]

side story
雀と烏
八咫森にて監禁中の話。
※暴力表現有り






「烏に虐められてる、雀って見たことある?」

「…──?」

奴の、磨かれた硬いブーツの爪先が、右頬を蹴りあげたその直後だった。
ドサッと土の上に倒れ込み、乾いた口の中で鉄の味が広がる。
奴に焦点を合わせようともせず、ぼんやりと霞む目で見ていた近くに生えた草が、その硬いブーツによって踏みにじられた。

「ここに来る前に見たんだ」

髪の毛を引っ張りあげられて、しゃがんだこいつといやでも視線を合わせることになる。

「烏が小さな雀をつついてつついて、他の2匹の雀がそれを助けようと必死に後を追いかけてた」

「……俺、みたいだって…いいて…んだろ?」

やつが言う前に、言いたかったであろうことを言ってやった。
肺の奥まで乾ききってしまってるようで、ひどく声が出しづらい。
やつは表情ひとつ変えずに、そんなつもりはなかったんだけどな、と楽しそうに言った。

「どちらかといえば、君の方が烏で、俺のほうが雀みたいだよね」

髪とかさ、とやつは自らのブロンドの髪を触って言った。

「可哀想だったなぁ…遠くだったから助けてもあげられなかったし」

「……そう…かよ…」

「助けようとしたほうとか、すごく鳴いてたんだよね。なんて言ってたんだろ?」

「さぁ…」

「うーん…そーゆーの見ると後味悪いよねぇ…そう思わない?」

引っ張られた髪の付け根が痛い。
こいつから漂う甘い匂いがひどく不快だ。
それと対照的に香る、土と血にまみれた自分の匂いも嫌だ。
貼り付いた、目の前の笑顔が、憎い。

「──っ!?」

口の中にたまる血を、目の前の奴の頬に吐きとばした。
頬にべちゃっとついて、やつの顔を伝う。
その汚い朱が、その無駄に小綺麗な顔によく似合うと思って、思わず笑みがこぼれた。

「ムカつくなぁ」

ガツンッ!!

「──っ…」

力任せに、地面に投げつけられ、思い切り頭をうった。
クラクラと視界がくらついたが、どうせ、視界がはっきりしたところで見えるものは変わらない。

「雀の末路を教えてあげようか?」

「………っ」

ガンッと肩を蹴られて、うつ伏せだった身体が強制的に仰向けにされる。
太陽を隠すように立っていたため、逆光でやつの顔は見えない。

「喰われてたよ、烏に」

果たしてその顔は嫌味に口角を吊り上げていたのか、また哀れみに眉根をよせていたのか。

火薬の小さな爆発音と共に、急所をはずして埋め込まれた銃弾のせいで、確認することはかなわなかった。






end




================
こんなの書いてたらアル君嫌われそうだな。ぇ
雀と烏の話は、実話です。



第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!