君を想う歌声
9
正直言うと、信じてなかったんだ。
この学園で強姦事件が多発してるとか、
男子校なのに嘘だろ?
みたいな感じでさ……
しかも、理事長って結構ふざけてるし?
冗談言ってんのかと思ってた。
だけど、さっきの理事長の顔は、
本当に俺に対して、
申し訳ないって思ってるのが、
伝わってくる表情だったから……
信じなきゃ失礼だよな……
「良かったわ……
分かって貰えて……」
俺の考えている事が伝わったのか、
理事長はフワリとした笑みを浮かべた。
思わず見惚れていると、
小指の付け根に痛みが走った。
「…………っ」
いきなりの痛みに顔を歪めると、
理事長は訝しげに俺を見てくる。
それを苦笑いで誤魔化しつつ、
小指を踏んづけてきた遥輔さんに
視線を向ける。
すると、遥輔さんは口パクで、
『惚れるなよ』
と言ってきた。
了解の意を込め、
首をブンブンと縦に振ると、
遥輔さんは満足げに微笑む。
「え? 何?
二人で会話しちゃってるの!?」
…………顔は美人でも理事長みたいな、
ちょっと性格難ありな人に、
俺は惚れませんから。
どっちかつーと、
女はSERIみたいなタイプの方が……
って、何考えてんだ、俺!?
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