君を想う歌声
2
大体男が頬染めたって、
キモいだけだって。
この子は可愛いからいいけどさ、
収録の後とかに
むっさい男が頬染めながら、花束持って、
出待ちなんかしてるの見ると、
滅茶苦茶テンション下がるんだよ。
特にそれが
俺のファンだったりなんかした日にゃあ、
蹴り飛ばしたくなる。
と、まぁ、
取りあえずそれは置いといて……
「あのさぁ……
悪いけど頼みあんだけど……」
このままここでこうしてても、
埒あかねぇしな。
この子に道案内頼むか……
「はい? いいですよ?
僕に出来る事なら」
「それがさ……」
そこまで言って俺はフリーズした。
この子に道案内を頼む=この子に
自分が迷子な事を
教えなくてはいけないという図式が
俺の中で完成してしまったからだ。
この子に案内を頼まなきゃ、
俺はいつ目的の場所に
辿り着くか分からない。
けど迷子になった事を
教えるのは恥ずかしい。
でも早く行かなきゃ新が恐い。
大袈裟かもしれないが、
正に究極の選択を
俺は強いられていた。
要は羞恥と恐怖、
どちらを取るかって話だよな……
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