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the first anniversary ---あとち---
(リリナルセブ)リクエストありがとうございました!







 「あら!ナルシッサにセブじゃない!珍しいわね、二人でいるなんて」
授業がおわり、後はもう夕食だけとなったとき、偶然三人は出会った。
「リ、リリー・・・!」
あからさまに輝くセブルスの顔に少しだけむっとする。
勿論、そんな道理は恋人でもないナルシッサにはないのだれど。
「どうしたの?でも嬉しいわ、セブもスリザリンでしっかりやっているのね」
にこにこと顔を綻ばせる。
セブルスは照れたように俯きながらかすかな声で答えている。
「ああ、そういえばセブ!この間貸してくれた本、とってもおもしろかったわ!マグル生まれの視点からみた魔法使い同士のいざこざの本。とっても共感できたわ!」
リリーがセブルスの手を握りながら興奮したようにぺらぺらと語り出す。
今まで思いもしなかったような視点からみれた、あなたの選ぶ本はどれもおもしろい、とリリーがあまりにも絶賛するのでナルシッサはどんどん不機嫌になった。
(そんなの、リリーの好きそうな本を選んでるだけじゃない)
「よかった、君が好きそうだなあって思って読んでみたらおもしろかったから・・・」
「セブはわたしの好みがよくわかるのね!本当にありがとう!」
ナルシッサはもともと表情が豊かな方ではない。
ないのだが、リリーならその些細な変化にも気づいてくれるだろうと思っていた。
そう、ナルシッサは今とてつもなくいらいらとしているのだった。
自分でも顔にでていると自覚する程度には。
「セブみたいな友達がいてほんとうによかったわ!これからもよろしくね!」
(どうして私ばかりこんな思いをするの?リリーは私のこと、好きじゃないの?)
不安と悲しさで、普段のナルシッサなら考えられないようなことをした。
突然セブルスの肩に頭を預けたのだ。
「なっ、どうしたんですか、ナルシッサ先輩・・・!」
さらりと絹のようなブロンドの髪が肩に掛かる。
普段リリー以外の女性からあまり触れられることのないセセブルスは赤面しておろおろとした。
ましてや校内で人気の美人となっては尚更だ。
リリーははじめてみるナルシッサにただただ驚いていた。
「だめよ、あんまり仲良くしたら。セブルスは私の弟なんだから」
ゆっくりと雫がおちるように微笑んだ。
ナルシッサの笑顔は稀少で、息をのむほど美しい。
リリーもセブルスもあんぐりと口を開けたまましばらく何も言えなかった。
「え・・・、なに・・・言ってるの・・・?」
しばらくしてリリーが驚愕の声を上げた。
どれだけ高速で頭を回しても彼女の行動の意図がつかめない。
「どうして?セブルスはスリザリンの可愛い後輩よ。弟も同然だわ」
セブルスは突然の告白にただ驚くことしかできなかった。
「な・・・っ!違うわ!入学する前からセブはあたしの弟だもの!」
リリーが必死な顔で言い返した。
おろおろとしていたセブルスが感情を露わにしだした。
まるでそんなにはっきり言わなくても、とでもいうようだ。
「ナルシッサのじゃないわ!あげないんだから!」
ナルシッサは必死になって言い返されて言葉に詰まった。
「・・・どうして・・・?リリーは、わたしより、セブルスのほうがすきなの・・・?」
はじめてリリーとセブルスはこれがナルシッサの嫉妬だったのだと、気づいた。
今まで感情を露わにしたことがなかったのでわかりづらかったのだ。
「なにいってるの。わたしの一番はいつだってナルシッサよ?」
ふんわりと眉毛が下がる。
リリーはナルシッサをぎゅっと抱きしめた。
ナルシッサが心底愛おしかった。
しかしそう簡単に信じられるはずもない。
嘘だ、と言い返そうとしたらリリーに遮られた。
「そもそもセブに対する好きとあなたに対する好きは違うのよ。できるなら、私はあなたを独占していたい。・・・そういう好きなの。だから、セブがあなたの弟なんて、嫌なの」
抱きしめる腕に力がこもる。
ナルシッサはかあっと顔に血が上るのがわかった。
どうしてこう、恥ずかしい台詞がこんなにもすらすらとでてくるのだろう。
「・・・わたしのこと、嫌いじゃないの?」
「どうして?わたしは誰よりナルシッサのことが大好きよ」
にっこりと笑うリリーを、ナルシッサも抱きしめ返す。
嬉しくて嬉しくてたまらなかった。
言葉にならないほどリリーが愛おしかった。
ナルシッサの中の気持ちが全てリリーに届けばいいのに、と心から思った。
 「え、あ・・・」
ぽつん、と状況に置いてけぼりされたセブルスはどうしていいのかわからずおろおろとしてた。
その時だった。
「ああ、良いところにいてくれたねスニベリー!ちょうど君と遊びたかったんだ!」
にっこりと両手を広げて近づいてくるのは、言わずもがなジェームズ・ポッターだった。
「ポッ、ター!」
反射的に杖を取り出したが、ジェームズはリリーに夢中だった。
「わあ!リリーじゃないか!・・・あー、だめだ。ナルシッサ嬢に夢中で聞いちゃいない・・・ちぇっ」
セブルスはしまった、と思った。
今のうちに寮へ戻ればよかったのだ。
そうすれば面倒なことには巻き込まれなかったかもしれない。
「・・・ねえ、君が僕と遊んでくれるだろう?」
悪魔のほほえみだった。
後ろからおなじみのメンバーまでやってくる。
「ちっ」
大きく舌打ちをしながらリリーに被害のないところまでとりあえず逃げる。
当の本人はセブルスの危機にまったく気づいてもくれてはいないのだが。
「あー・・・。頑張ってね。僕は大広間にいってるから」
ひらひらと手を振ったのは本来止める立場にあるはずのリーマス・ルーピンだった。
ピーターもおなかが空いているのかリーマスに付き添って大広間へと向かう。
そのまま一緒に大広間に行けばいいものを、シリウスはジェームズについてきた。
「加勢するぜ!」
これはとても面倒なことになった。
今日はなんて散々な日なのだろう。
ホグワーツではもはや恒例の、鬼ごっこが始まった。
 セブルスたちが走り去ってしばらくしてから、リリーはセブルスがいないことに気がついた。
「あれ?セブは?」
ナルシッサは実は一部始終をみていたが、黙っていた。
(たまにはこんな意地悪をしてもいいでしょう?まあセブルスには、申し訳ないけど)
「どうしちゃったのかしら・・・先に大広間に行っちゃったのかなあ?」
きょろきょろとあたりを見回すリリーにそっと囁いた。
「そうかもしれないわね。私たちも、降りましょう」
「そっか・・・うん、そうだね!おいしいものあると良いなあ」
二人で手をつないで大広間へと降りていく。
同時刻、中庭ではセブルスが大変な目に遭っていることにリリーはまったく気づかなかった。


奇しくも、十月三十一日のハロウィンのことだった。


 今年もまた、変わらずホグワーツにハロウィンがやってきた。
学生だったセブルスは成長して教師となった。
当時と同じように見上げるきらびやかな飾りたち。
変わってしまったのは、セブルスの環境だ。
記憶の中のハロウィンはとても切ない。
痛くて苦しい喪失の思い出だ。
けれど今、この場所にたって思い出したハロウィンは違った。
賑やかなハロウィンだった。
リリーがいて、ナルシッサがいて、迷惑な四人組がいて。
その思い出はほんのりとセブルスの気持ちを優しくしてくれた。

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あきゅろす。
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