(セブリリ)リリー死後
僕 と 君 の 間 の 距 離
はじめは、この木とあのブランコほどの距離。
つぎは5cmほどしか離れていない、君の隣。
そのつぎは塔と塔の距離。
そのつぎはもう触れられない、はじめより遠い距離。
そして、今は二度と届く事のない距離。
10月31日。
君が永遠にいなくなった、日。
ひとり切れ端の写真を胸に抱きながら涙で頬をぬらす。
今日は彼が最初で最後の恋をした彼女の、命日。
彼の名をセブルス、彼女の名をリリーといった。
「リリー…」
誰に言うでもなく、セブルスは呟いた。
「セブルス…?」
背後から突然声がした。
驚いてふりかえると立っていたのはアルバス・ダンブルドア。
彼の恩師であり、彼女の恩師だ。
セブルスが勤めるホグワーツの校長をしている。
「…校長」
セブルスは袖で涙をぬぐいながらダンブルドアに近づいた。
「今日は…」
「彼女の、命日です」
セブルスは言いながらまた目に涙をためていた。
子供のようにポタポタと床に雫を落としていた。
「セブルス。今日だけは君にもみせてやるべきかの…」
彼の言っている意図が分からずセブルスは困惑した。
「なんの…話をしていらっしゃるのですか?」
「ついてくるのじゃ」
ダンブルドアは踵を返して歩き出した。
わけがわからなかったが後に続き、歩き出した。
しばらくの沈黙をすぎてたどり着いたのは古い鏡の前だった。
「これは…」
‐みぞの鏡‐
鏡のふちにはそうかかれていた。
この鏡は世界一幸福なものがみればただの鏡に見える。
だが、大抵のひとはなにかをみる。
一人ひとり違った、心の奥にある望みを見るのだ。
「今日だけは存分ここにいるといい。明日には動かしてしまうがの…」
「あ…ありがとうございます…」
セブルスは堪えていた涙が再び頬をぬらすのを感じた。
堪えようと思っても堪えられなかった。
「セブルス。泣きたいときに、泣けるときに、泣いておくのが一番なのじゃよ」
そういってダンブルドアはそっとその場を後にした。
セブルスはしばらく彼の優しさに涙した後、鏡に向き直った。
そこには、愛する彼女の慣れ親しんだ姿があった。
「わざわざ、学生時代で現れなくてもいいじゃないか…」
セブルスは下手くそな笑顔を作ると、再び泣き出した。
その夜、セブルスは鏡の中の彼女に話しかけながら泣き明かした。
この時だけは永遠に離れた距離が、5cmまで縮まっていた。
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