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(セブリリ)6巻後くらい?







まるで砂糖のような恋だった。
紅茶にいれてから砂糖が解けるまでにほんの数秒しかかからないように、彼女を知ってから恋をするまでに長くはかからなかったと思う。
しかしそれが恋なのだと自覚したのは随分と後のことだ。
私はとても小さな世界にいたのだから。
はじめは蛍の光のようにかすかに宿る思いだったのだから。
恋と呼ぶには微力すぎるものだった。
けれど私は確実に彼女にひかれていたのだ。
人は、離れてから気づくことのほうが多いという。
まさにその通りだと私は自嘲気味に笑った。
離れてから彼女の大きさを知った。
彼女のことを知っていたつもりで、何一つ知らなかった。
それでも言いたかった、ずっと言えなかった言葉がある。
ごめんねよりも、ありがとうよりも、先に伝えたい言葉。

「僕を愛してくれてありがとう、ずっと、君を、愛していた」

私は、とても臆病だから言えなかったけれど。
彼女の答えを聞いてみたかった。
子供のころ、入学したころ、…決別のころ、そして最後のとき。
少なくともあのポッターに会うまで、彼女の気持ちはどこにあったのかだけでも聞いてみたかった。
魔法界のことを教えたとき、自惚れではなく、彼女は私だけを見ていた。
あの優しげな瞳が今でも心を癒す。
一番でなくても、私という存在を肯定してくれる唯一の瞳だった。
あの頃の思い出だけが今を生きる支えだ。
どれほど憎まれようと恨まれようと罵られようと立ち続ける。
彼女の墓前に誓った。
決して、折れぬと。
守れなかった代わりに君の愛する息子を守ると。

もし会えたら、彼女は、笑ってくれるだろうか。
そして私はあの言葉を、言えるだろうか。



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