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(リリナル)学生時代






ガヤガヤと騒がしい朝の大広間。
その中でリリーは同寮生と一緒に朝食をとっていた。
ふ、と扉をみるとナルシッサが入ってくるところだった。
思わず顔がほころぶ。
「ナルシッサ!」
立ち上がって手を振る。
まるで花のように麗しく、しゃんとしてナルシッサが歩いてきた。
「おはよう、リリー。どうしたの?」
声がまだ眠気を纏っている。
「なんでもないわ。ただナルシッサと話したかっただけよ」
悪戯っぽく笑うとナルシッサも微笑んだ。
それから他愛もない話をした。
話すだけで、楽しくて幸せだった。
「…ねぇリリー。その人、スリザリンの人でしょう?」
同寮生のひとりがそっと口をはさむ。
明らかに嫌悪の色を含んでいる。
「そうよ。…あなたの言いたいことはわかってるつもりよ。でもスリザリンの人全員が闇の魔術にとらわれているという認識は間違っていると思うわ」
リリーは強く言い切った。
一方、ナルシッサはそっと俯いた。
自分といるせいでこんな風に言い合っているのを見るのは心が痛かった。
「どうかしらね。…先に寮に戻ってるわ」
ガタン、と席を立って寮へ戻っていった。
悔しそうにリリーが去っていく背中を見つめていた。
「…一緒に戻らなくていいの?」
「いいの。何度言ってもわかってくれないのよ、寮で人柄を決めるなんて馬鹿げてるって」
そっとナルシッサの手を握る。
しっかりと握り返しながらもナルシッサはますます俯いた。
それから呟くような微かな声で言った。
「どうして私と一緒にいてくれるの…?」
あなたの、優しさなの?
リリーは彼女が言外に何を言ったか悟り、微笑んだ。
「あなたのことが好きだからに決まってるじゃない。雪花石膏のような肌も透き通るような瞳もずっと見ていたいくらいにきれいだし」
楽しそうに話すリリーとは対照的に誰にもわからないほど微かにナルシッサの肩が揺れた。
「そ、う…」
平常でいようと心掛けながらも、できなかった。
ナルシッサの整った顔が少しずつ歪んでいく。
さすがにその変化に気づいたリリーがあわてて聞く。
「わ、私何か嫌なこと言ったかしら…!」
「…まるで、人形のようよね」
自嘲気味にナルシッサが笑う。
透き通るような瞳が切なく揺れる。
「みんな言うの。綺麗ね、お人形みたいね、すわっていてくれるだけでいいわって」
まるで話すなと言われているように、何度も、何度も。
他人が必要とするナルシッサは“美しいお人形”であり、人間ではないのだ。
「…ねぇナルシッサ。私はあなたの外見ももちろん好きよ。だけど内面はもっともっと好きなのよ。考え方とか、魔法とか。その人たちは可哀そう。ナルシッサの魅力は内面を理解してこそわかるものなのに。内面の美しさが出ているから外見がより輝くのよ」
リリーがにっこりと微笑む。
ナルシッサの瞳が、涙でほんのりにじむ。
それから二人は何も言わず、手をつないで座っていた。
大広間のざわめきだけがそっと二人を包んだ。

ぐぅ。

突然小さいけれどしっかりとした音が鳴った。
リリーが驚いて横を見ると、ナルシッサが真っ赤な顔で俯いていた。
「ふふふ、ごはん、食べましょうか」
クスクスと笑いながら聞くとナルシッサは無言でうなずいた。
それから静かに耳打ちする。
「こういう可愛いとこも、大好きよ」



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