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(ブラック姉妹)7巻後







朝が来た。
眩い光に包み込まれて、世界は晴れていった。
一晩中騒いでいる人々は未だ疲れを知らずにお祝いを続けている。
それは続いていた闇の支配の長さを示しているようにも見えた。
ホグワーツの外にも戦争の結果が知らされ、遺族が続々と現れている。
その中に、彼女はいた。
片手に赤ん坊を抱えながらふらふらとした足取りで、娘と義理息子の遺体の前に膝をついた。
「…ニンファドーラ…リーマス…そんな…」
堪えていた涙が溢れ出した。
止まらずに、ただ頬を伝い続ける。
抱えられた赤ん坊までもが泣き出した。
「アンドロメダ…」
キングズリーが悲痛に面持ちでアンドロメダに話しかけ、優しく肩に手を添えた。
「あ、あの二人は…た、戦ったわ!」
モリーが泣きながら言った。
「彼らは勇敢だった。騎士団の、誇りだ…」
アーサーは悲しみに暮れた目をしながら慰めた。
彼らもまた、息子を失ったのだ。
「…ありがとう…。この子達はテディにとって自慢の両親だわ…」
アンドロメダは抱えた赤ん坊を撫でた。
しかし赤ん坊は泣き止まなかった。
しばらくした後、アンドロメダはスッと立ち上がった。
彼らとの別れの挨拶の前に、まだ会いたい人がいる。
「…ベラは、どこに?」
「…こっちよ」
モリーが手引きする。
モリーがベラトリックスを殺した事をアンドロメダは知っていた。
けれどモリーは謝らなかったし、アンドロメダは責めなかった。
これもまた、ひとつの結果なのだから。
ベラトリックスの遺体はすみのほうにひっそりと横たわっていた。
傍には、たったひとり付き添っていた。
「ナルシッサ…?」
アンドロメダか思わず名を呼ぶ。
久しく会うことのなかった、妹の名を。
「ア、アンドロ…メダ…なの…?」
泣きはらした赤い目でアンドロメダを見つめた。
モリーはテディを預かると、そっとその場を後にした。
「久しぶりね、私たち姉妹がそろうのは…」
アンドロメダはゆっくりとナルシッサの脇に座った。
「私…!ベラが…!ドロメダに…!」
言葉にならない叫びが漏れる。悲痛な叫びだった。
ナルシッサの目から再び涙がこぼれた。
アンドロメダはたまらずナルシッサを抱きしめた。
「あの家をでたこと、後悔してないわ。二人にもう二度と会えなくなるかもしれないことも分かっていて出て行ったの。でも…でも私は、闇とか光とか、何もない世界でもう一度三人で暮らしたかった。過ごしたかった…」
叶わなかった願い。
言えなかった思い。
アンドロメダの目からも涙が溢れ出した。
もう一度会いたかった、大好きな姉。
「ドロメダ…ベラは、いつでもあなたを思ってた。時々、写真を見ていたの…。私たち三人の願いは同じだったのに…なのに…!」
もうどれほど願っても、思っても、彼女は還ってこない。
「でも、いつまでだって私たちは姉妹で、家族だわ…」
アンドロメダはナルシッサから離れて、ベラトリックスの遺体に目を向けた。
そしてそっと髪を撫でた。
生きていたころと変わらない、柔らかいウェーブを描いた黒髪。
「ねぇ、ベラもそう思うでしょう…?」
答えを望むように話しかけるが、もう目が開くことすらないのだ。
「…ベラもそうだって、言ってくれるわ…きっと…」
ナルシッサはアンドロメダの手を握った。
優しい手だった。
「そろそろニンファドーラ達のもとへ戻るわ…」
しばらくたった後、アンドロメダがゆっくり立ち上がりながら言った。
「…私も、姪に会ってもいい…?」
ナルシッサが見上げた。
会ったことのない、姪。
どんな顔なのか。
どんな髪の毛なのか。
アンドロメダに似ているのか。
なに一つ知らない。
「もちろんよ…。会ってあげて…」
二人は多くのものを失ったが、大切なものもまた、手に入れた。
戦いは終わり、世界は明るかった。
緩やかに時は流れ、すべてが平和だった。
二人は手を繋いで歩き出した。



あきゅろす。
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