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(リリ→ジェのような)学生〜結婚時代



使



誰がわたしを美化したの?
わたしは、そんなお綺麗な存在じゃないわ。
憎むし、嫌うし、避けるわ。
わたしは天使なんかじゃない。
ちっぽけで弱い人間よ。
ほんとうに大切なものをなにも守れない。助けられない。
どうしてそんなわたしを愛してくれるの?
あなたは酷い人。
大嫌いだった。許せなかった。
でも尊敬している自分もいたの。
いつの間にか目でおっている自分がいたの。
わたしは優しくなんかないわ。
誰より酷い。
ねえ、なのにあなたはわたしを好きだと言うの?

「リリー!今日も可愛いなあ!」
ニコニコ笑いながら彼が手を振る。
見ないふり。聞こえないふり。
「ん?恰好良すぎて僕が見えない?ああ、僕って罪な男!」
彼の取り巻きたちが笑う。
時々本気で病気なんじゃないかと思うほどの自信家。
「…毎日毎日飽きないの?」
言葉にため息が混じる。
よくもまああれだけ自分に自信がもてるものだ。
「なにに?君に?飽きるわけないさ!君ほど魅力的な女の子はいないね!」
「あら、昨日レイブンクローの子を口説いてたのはどなただったかしら?」
うっと彼が言葉につまる。
しかしすぐ笑顔を取り繕った。
「君が僕とデートでもしてくれたら僕は君以外に目を向けたりしないよ」
本当か、と聞きたくなった。
正直とても胡散臭い。
「どーかしらね、抑わたしの何処が好きだというの?」
ずっと気になっていた。
わたしは偽善者で、とても酷い人間だ。
なのに彼は躊躇わず好きだと言う。
何故?
外見しか見ていないから?
「可愛いところとか頭がいいこととか」
やはり、と落胆しかけたが彼の言葉は続いていた。
「でも何より、嘘つきで頑張り屋なところが好きだよ」
彼の取り巻きは冗談だと思ってケラケラ笑っている。
でもわたしには本音に聞こえた。
「おかしな人ね」
一言残して足早にその場所を後にした。
彼は知っていたのだ。
わたしの時々する作り笑いも偽善も。
それを踏まえて、好きだと。
はじめて彼が本当にわたしを好いてくれているのがわかった気がした。

わたしはもう飛べない。
白い羽を汚してしまったから。
けれど大切なものが、側にいてくれる人ができました。
彼はわたしがもう天使じゃないと知りながら、僕の天使だと笑ってくれました。
決して美化したりせず、本質を認めてくれました。
わたしは彼と、ジェームズと結婚できて、とても幸せです。



あきゅろす。
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