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(黒兄弟)







二度とは戻らない、失った時間。
ただ後悔だけが責め苛む。
罪を裁くのは穢れを知らぬ天使か、闇をつかさどる悪魔か。

たった一人の弟を、失った。
違う道を進み始めた時に分かっていたことだ。
別れてしまえば最後。
死に際すら会うことは叶わない。
それでも、彼を救いたかった。止めたかった。
救うことも止めることもできなかったけれど。
仕方がないだろうと諭された。
確かにそうなのかもしれない。
決別を選んだのは紛れもなく自分自身なのだから。
でも、たった一人の、最愛の弟だったのだ。
失いたくはなかった。
涙はとめどなく溢れ続ける。
頭の中で、瞼の裏で、彼がめぐり続ける。
笑顔、怒り顔、泣き顔、すね顔…全部。全部。
彼は去って行った。
消えない深い傷をおれの胸に刻みつけて。

「兄さん」
彼の優しい声が、耳から離れない。


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