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(リリペチュ)幼少期







どうしてこの手はあなたと同じように魔法を使えないの。
どうしてこの足はあなたと同じように箒にまたがって飛べないの。
どうして、私たちは同じじゃないの。

「ただいま、チュニー!」
昔と変わらぬ温かい笑顔で姉は帰ってきた。
私をおいて行ったことなど忘れてしまったように。
「…」
私はただ無言で自分の部屋へと駆け上がった。
愛おしさと切なさが入り混じり、どんな顔をしたらいいのか分からなかった。
また傷つけてしまうような気がした。
コンコン
静かなノック音が部屋の中に響いた。
「チュニー、このままでいいの。話を聞いてほしいの」
リリーの切実な声がした。
是というのも否というのも憚られたのでノックを小さくひとつ返した。
「ありがとう」
ふ、と微笑む顔が見えるような気がした。
リリーはペチュニアのノックを是と解釈したようだ。
それからリリーはゆったりとホグワーツについて話し始めた。
大きな校舎、御馳走だらけの食事、生意気で高慢な四人組、スネイプとは寮が別だったこと、ペチュニアと同じ髪色をした少女と知り合ったこと。
そして魔法の授業のこと。
それはきっとペチュニアを楽しませようと話したことなのだろう。
その気遣いが息苦しかった。
ペチュニアは思わず怒鳴ってしまった。
「いい加減にしてよ!ここはあなたがこの一年行っていた狂った世界なんかじゃない!普通の人間の世界なの!魔法なんて意味ない。存在しない。ここでは数学もできないあなたの方が変なのよ?ねえ、わかってるの?偉そうにぺらぺら自慢なんかしないで!」
ああ、こんなこと、言うつもりなんてなかったのに。
どうして素直になれないの。
リリーは小さく泣きそうな声で「ごめんなさい…」と呟いて部屋の前から去って行った。
どうして、どうしてあなたが謝るの。
悪いのはあなたではないのに。
ペチュニアは静かに涙を一滴こぼした。
もう仲直りできないのだと、思った。
自分の非を自覚してもきっとこれから先も彼女を理不尽に責めてしまうのだろう、と。

一方リリーはペチュニアの部屋の前を立ち去ってからまっすぐ自分の部屋へと戻った。
そしてすぐに手紙を書き始めた。
宛名は、ナルシッサ・ブラック。
ねえどうしよう。
仲直りしたかったのに。
話がしたかったのに。
どうしてうまくいかないのかしら…。
ねえナルシッサ。
私はもう妹と仲直りできないのかしら…。
それはリリーらしくない文章だった。
ただ弱々しくどうしよう、と繰り返していた。
手紙を書いているうちにポロポロと涙が溢れた。
それは反省の涙か、後悔の涙か、悲しみの涙か。
ただ彼女にはどうしたらいいのか、もう分らなかった。

その日の夕食、両親は帰省を喜んで御馳走を作ってくれた。
ペチュニアは母親に笑顔で話しかけた。
「リリーは毎日学校で御馳走が出るらしいわ。でも私はママの御馳走が一番好きよ!」
リリーは一瞬引っ叩かれたような顔をしたが、すぐに笑った。
「私だってママの御馳走が好きよ。食べたくて仕方なかったんだから!」
あらあら、と母親は微笑んだ。
言葉の水面下で傷つき合っていることにも気がつかず。
そうやって少しずつ少しずつ姉妹の心は離れていった。
悲しみに溺れながら、心に嘘をつきながら、離れていった。



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