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(帝王とレギュ)







「なぜ呼んだのかは分かっておるな?レギュラス」
闇の帝王、ヴォルデモートは静かに聞いた。
「もちろんでございます」
淡々とした声でレギュラスは答えた。
答えを聞くとヴォルデモートは口の端に笑みを浮かべた。
ヴォルデモートからの呼び出し。
それは人殺しをしろという、残酷な命令を受けるという事。
「よし、前々から見張っていた騎士団のあの一家を惨殺しろ。一人も残してはならぬ。わかっているな?」
「はい、我が君」
ヴォルデモートに仕事を任され、誇らしげに答えた。
一度闇の道に入った以上は彼に尽くそうと心に誓い、ここまで来た。
仕事こなしていくうちにレギュラスの心は壊れていった。
幸せだった兄との思い出も、クリーチャーや母、従姉妹との思い出もひとつずつ零れ落ちるように消えていった。
惨殺するときに感じていた罪悪感さえ今は失っていた。
ただ命令のままに動くだけのヴォルデモートの忠実な臣下だった。
「さようなら」
笑みもこぼさず淡々と人を殺す。
昔のレギュラスなら考えられない暴挙だった。
虫一つ可哀想だから、と殺さなかった無垢な少年。
兄を罵倒しなければならない時も泣きそうに顔を歪めていた少年が。
こうもいとも簡単に人を殺していく。
「おわりました、我が君」
仕事を終え、再びヴォルデモートの前に跪いた。
「はやかったな、レギュラス。よくやった。一人も残してはおらぬな?」
確かめる声に重みがかかる。
心を読みながらも言葉と表情でその忠実さを図る。
「もちろんでございます、あなたのご命令通りです」
不意にヴォルデモートがそっと手を伸ばし、不敵な笑みを浮かべながらレギュラスの首筋にある闇の印を撫でた。
「お前のような忠実なるデスイーターこそ、信用できるというものだ」
「ありがたき、幸せでございます」
ぎこちなく微笑んだ。
まるで、笑い方を忘れたような、微笑みだった。
ヴォルデモートの手が首筋から頭へとあがり、そっと撫でた。
「もうひとつお前に、してもらいことがあるのだ」
ヴォルデモートからの信頼にこたえようとレギュラスは深々と頭を下げた。
「なんなりとお申し付けくださいませ」
レギュラスから顔が見えのことをいいことに、ヴォルデモートは嘲るような冷笑をほほに刻んだ。
(なんと愚かしい奴だろう)
心ではそう笑いながら。
「貴様の家のしもべ妖精は忠実だと聞く。一番忠実なものを使いたいのだ。決して命にそむかぬ、忠実なものでなければならぬ。」

そして、残酷な運命の歯車がまわりはじめる。
レギュラスが真実に届くまで、あと、すこし。



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