(黒兄弟if)7巻後
君 が い た な ら
ブラック家のタペストリー。
その中にシリウスはいない。焼け焦げとなっている。
彼の弟、レギュラスの上には髑髏がいる。
闇の帝王の手下死喰い人だという証だ。
しかし彼は闇の帝王によって殺された。
深く入り込み、そして怖気づいたのだという。
(…お前が生きていたらな…)
シリウスはレギュラスの部分をなでながら思った。
そして、自嘲した。
(こんなことを考えるなんてどうかしてる…)
その日の夜、シリウスは夢を見た。
騎士団が闇の帝王を倒し、シリウスが本部へと戻ったときのことだった。
無人のはずの本部から物音がした。
「誰だ…!」
シリウスが声を張り上げると奥から人の声がした。
「おかえり、兄さん」
懐かしい声だった。
ゆっくりとそちらを振り向いて現れた人物の顔を見てシリウスは目を見開いた。
「レ…レギュ、ラス…?」
死んだはずの弟、レギュラスが立っていた。
「…闇の帝王を、倒したんだね」
「お、お前、死んだはずじゃ…!」
シリウスは杖を取り出しながら聞いた。
「そんなに構えないで、本物だよ。…クリーチャーが助けてくれたんだ」
レギュラスが足元を見て微笑んだ。
そこには大粒の涙をこぼしているクリーチャーがいた。
「クリーチャーが?お前はヴォルデモートに殺されたはずじゃ…?」
「そうだね、でも生きてる。それより、再会を喜んではくれないの?」
にっこりと笑ってレギュラスは言った。
「…本物ならば、嬉しい。」
「疑り深いなあ、本物だよ。証明だってできるよ、言おうか?」
シリウスは大きく息を吸って答えを促した。
「昔、兄さんはお母さまから入学祝に頂いたブラック家のブローチをキッチンの床下に捨てたでしょう」
レギュラスの言葉を聞いてシリウスは驚愕した。
確かに少年時代シリウスはその通りのことをした。
そしてそれをレギュラスに見られた。
言うな、と念を押した事もしっかりと覚えている。
「本当に、レギュラスなんだな…?」
答える代わりにレギュラスは微笑んだ。
シリウスは無言でレギュラスを抱きしめた。
「会いたかった…兄さん…」
「なら何故もっとはやく現れなかった…!」
涙声になりながら怒鳴った。
「ごめんね、兄さん…」
唐突に、夢は終わった。
ベットから起き上がったシリウスは目元から涙が零れ落ちているのに気が付いた。
幸せな、夢を見た。
涙が出るほど幸せで、悲しかった夢。
無意識にシリウスは呟いた。
「レギュラス…」
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