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(シリ→レギュ)







子供のころから兄弟2人だけの秘密の場所があった。
もしかしたらクリーチャーは知っていたかもしれないが、何も聞かれたことはなかった。
騎士団にこの家を本部として提供すると決めた時はじめに向かったのは兄弟2人だけの場所だった。
「ここに入るのは何年振りか…」
つぶやいた言葉は静かな暗闇に消えた。
杖で明かりをともすと部屋がぼんやりと明るくなった。
杖を手に眺めていると小さな箱を見つけた。
その箱には ‐この世で一番大切な物の名を呼べ‐ と刻まれていた。
「レギュラスが書いたのか…?あいつが大切にしてたもの…」
シリウスは必死に考えを巡らせた。
「‐純血‐…?」
ところが箱が開く様子は微塵もない。
「違うのか?じゃあ、‐ブラック家‐」
やはり箱は開かなかった。
それから思いつく限りにレギュラスの大切にしていたものを言っていった。
クリーチャー、ヴァルヴルガ、バーティー…。
しかしどの言葉でもレギュラスの箱が開くことはなかった。
「なんでだ?まさか…」
シリウスは震える唇で自分の名を呟いた。
すると今までびくともしなかった箱が容易に開いた。
「レギュラス…」
箱の中をのぞいてみると分厚い手紙と一枚の写真が入っていた。
写真を見てシリウスは涙をこらえられなかった。
それは、最初で最後の兄弟が笑っている2人の写真だった。
「これ…こんなに…ぼろぼろで…」
ふと写真を裏返すとレギュラスの字が書かれていた。
‐いつかもう一度兄さんと笑えますように‐
レギュラスの哀しい願いがそこにはあった。
光と闇。
再び交わることのなかった兄弟の道。
そして交わる未来が来ないことを、知っていたのに。
シリウスは写真を見つめながら大粒の涙をこぼした。
「ありがとう、レギュラス…俺の弟でいてくれて…」
しばらく涙を流した後、シリウスは分厚い手紙に向き直った。
文章の書き出しはまたしてもレギュラスの願いだった。
‐この手紙と場所が兄さん以外の人に見つかりませんように。そしていつか兄さんが見つけてくれますように‐
「おそくなって、ごめんな…」
手紙にこたえるようにシリウスは暗闇に呟いた。
それから長い時間をかけて手紙を読んだ。
ゆっくりと、かみしめるように。
兄弟の空白の時間を埋めるように…。
手紙にはシリウスへの想い、願い、絶望。
レギュラスの全てがあった。
しばらくして、徐に立ち上がり部屋から出て行った。
羊皮紙と羽ペンをとりに行ったのだ。
文頭にレギュラスへ、と書いた。
届くはずのない手紙を書きはじめたのだ。


       *

レギュ、手紙ありがとう
お前の字を見たのは久しぶりだよ
小さい頃はあんなに一緒だったのにな…
俺はお前が好きだった
だけどお前はスリザリンに入ってから父母の期待にこたえようと一生懸命になった
セブルスと同じように闇の魔術にのめりこんでいった
もう、昔と同じように好きでいることはできなかった
いいや…できないと思っていた
お前の手紙を読むまでは…
遅くなってごめんな
お前の手紙を読んでそれは間違いなのだと気づいたよ
たとえ闇の魔術にのめりこもうと、死喰い人になろうと、お前は俺の弟なんだよな
いつだって俺を好きでいてくれた、俺の自慢の弟なんだよな…

       *



あきゅろす。
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