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(シリウス、happybirthday!)※年代を飛び越えてます 学生時代







「あの、兄さんの友達ですよね?」
ジェームズが上機嫌で歩いていると、彼を引き止める声がした。
「ん?ああ、レギュラスか!」
レギュラスはジェームズの親友、シリウスの弟にあたる。
だが兄弟で寮がばらばらなので話しているところを見かけた人は少ない。
そんな彼がジェームズに何の用なのか。
「で、何?」
ジェームズはレギュラスに呼び止められた理由を聞いた。
するとレギュラスはポケットから小さな包み箱を取り出した。
「これを兄にお渡し願えますか」
「シリウスに?何故だい?プレゼントを渡すような間柄だったかな」
怪訝な顔をして訪ねたジェームズにレギュラスは少し寂しそうな顔をして首を振った。
「…違いますが、せめて誕生日くらいは、と思いまして」
誕生日、という言葉にジェームズは目をむいた。
「え?シリウス今日誕生日なのかい?」
驚いたジェームズを見て、レギュラスもまた驚いた。
「知りませんでしたか?…まあ、とにかくお願いしますね。」
用件だけ言ってレギュラスは足早に去っていった。
しっかりとプレゼントをジェームズに握らせて。
「…嘘だろ」
残されたジェームズは唖然としていたが、思い立ったように自身の寮がある塔まで全速力で駆けていった。

「シリウスー!」
ジェームズの大声が塔全体に響き渡る。
「…なんだよジェームズ大声出して…」
眠そうな目をこすりながらシリウスが談話室へと降りてきた。
「お前なんでいわなかったんだよ!今日が何の日か!」
ジェームズは興奮と少しの怒りをこめてシリウスを問いただした。
間近に迫られたシリウスは困惑しながら答えた。
「今日?なんかあったか…?デートはなかったはずだぞ」
果たしてそれが本気なのか冗談なのかわからないほど見当はずれの答えを聞いてジェームズは呆れながら、ため息交じりに答えた。
「何言ってるんだよ!君、誕生日なんだって?」
シリウスは必死に記憶を手繰り寄せながら考え、そういえばそうだった気がする、と呟いた。
「はあ…なんで自分の誕生日を覚えてないかなあ?レギュラスから聞いて吃驚したよ」
ジェームズの落胆したような声を聞いてシリウスは苦笑する。
「しょうがないじゃないか。で、なんでそんな話になったんだ?」
「ああ…これを渡してくれって頼まれたんだ」
そういってポケットから小さな包み箱を取り出した。
包み箱のカードには 誕生日おめでとうございます と無機質に書かれていた。
「プレゼント?あいつが?…覚えてたのか」
包みを受け取り、開いてみるとそこには時計が入っていた。
それも、普通の時計ではなく赤いベルトのグリフィンドール調の特注品と思われるものだ。
「これ…」
「なあシリウス。どうしてこんな弟が祝ってくれる誕生日を忘れたりしたんだ?今までだってプレゼントくらいもらっていただろう?」
ジェームズの素朴な疑問にシリウスは一瞬顔をしかめた。
「…ブラック家では、誕生日というものが存在しないんだ。正確には俺自身を祝うものじゃなかった、というべきか。一族の繁栄と純潔者が増えていく事に対しての祝いだったからな…」
シリウスはそれからも今までの誕生日の思い出をぽつぽつと語り始めた。
いつもプレゼントはあるがしもべ妖精が届ける冷たいものだったと。
それも純潔の証だったり、ブラック家の品だったりしたのだと言う。
シリウスにとってそれは拷問に近い苦痛だったのだと。
「俺にとってそれはいい思い出なんかじゃない。だからきっと忘れてしまったんだろうな…。悪かった、教えてなくて」
シリウスのいつになく真剣な顔にジェームズは苦笑する。
「いや、僕こそ悪かったよ」
二人がまた少し親友の絆を深めたとき、二人目の親友が現れた。

「シリウス!君、誕生日なんだって?」
先ほどの繰り返しに、ジェームズもシリウスも笑った。
「ああ、そうみたいだな」
シリウスが笑いながら搾り出しように言った。
「で、ムーニー。君はどうしてその事を知ったんだい?」
ジェームズは親友、リーマスを綽名で呼びながら問う。
「え?ああ、ナルシッサに突然呼び止められてね」

「ごめんなさい、あなたシリウスと仲がいいのよね?」
いきなりナルシッサに呼び止められ、聞かれたのでリーマスは驚いた。
「え?あ、はい多分…」
「申し訳ないのだけれど、これを渡してくださるかしら」
そういってナルシッサは緑と赤でつつまれた包みを差し出した。
「いいですけど、なぜ…?」
受け取りながらリーマスはプレゼントの理由を聞いた。
家から裏切り者といわれるシリウスといまさら深く関わるような理由はないはずだ、と考えたのだ。
「あら、知らない…?今日はシリウスの誕生日なのよ。離れていても、従姉弟だから…。せめて、と思って」
それからナルシッサはよろしくね、と言って立ち去った。
そしてリーマスはジェームズと同じように全速力で塔へと向かったのだった。

「はは!そこまで僕の時と同じなんだ!」
ジェームズは腹を抱えて笑った。
「え?同じ?」
「いやな、さっき僕おんなじことレギュラスにやられたんだ」
それからジェームズは自分の経緯を話した。
リーマスのした経験とそっくりな話を。
「いやあ、ブラック家ってそっくりだねえ…。ほら、これナルシッサからだよ」
一通り笑った後、リーマスは包みを取り出した。
包みをうけとり、包装を開くとなかにはハンカチが入っていた。
それもナルシッサの手作りと思われる赤、緑の二色が使われたハンカチだ。
刺繍でSBとイニシャルまで入っていた。
「ナルシッサ…裁縫、苦手だって言っていたのに」
呟いた言葉をジェームズとリーマスは聞こえなかった振りをした。
久しぶりに感じたブラック家の暖かさをわざわざからかうことはない。
「あ!そうだ、僕も急遽プレゼント用意したんだよ!大変だったんだから…」
そういいながらリーマスはズボンやローブのポケットをひっくり返した。
すると中から色とりどりのお菓子が出てきた。
「お前…これ…」
手に取るとそれはホグズミードの人気店ハニーデュークスのお菓子だった。
「ちょっと抜け道から行って調達してきたんだ」
リーマスは微笑みながらお菓子をシリウスに差し出した。
「ははっ、ありがとな、ムーニー!」
屈託のない笑みを浮かべながらシリウスはリーマスの肩を抱いた。
それから三人でお菓子を囲んでいると、三人目の親友が現れた。

「シ、シリウス!誕生日、おめでとう!」
本日三度目となる場面にシリウスは笑いこけた。
「お前らそっくりだな!」
ジェームズもリーマスも笑ったが現れた親友、ピーターはわけがわからなかった。
「え?え?」
「いや、いいんだ。で、お前はどうして知ったんだ?」
シリウスが質問するとピーターはべそをかいて答えた。
「とっ突然ベラトリックスに呼び止められて…」

「おいそこのちび!」
不機嫌な顔をしたベラトリックスに呼び止められてピーターはびくびく震えていた。
「べ、ベラトリックス・ブラック…!な、なに!」
「お前、あの裏切り者の仲間だろう?これを渡しておけ」
そういってベラトリックスは乱暴に黒い包みをピーターに渡した。
「な、なんで…?これ…なに?」
「別にナルシッサに言われたから用意したまでだ!じゃなきゃあいつの誕生日などどうでもいい!従姉弟といえどただの裏切り者に!いいか、渡しておけよ!」
ベラトリックスはそのまま不機嫌に歩いていってしまった。
「誕生日…?シリウスが…?」
ピーターは渡された黒い包みを抱えながら塔へと走り出した。

「はー、やっぱり彼女もブラック家だねえ!」
リーマスが愉快そうに笑う。
戸惑っているピーターにジェームズがこれまでの経緯を説明してやった。
「な、そうだったんだ…」
ピーターも安堵したように笑った。
そして思い出したように黒い包みをシリウスに手渡した。
シリウスが包みを開けると黒いセーターが入っていた。
それも、ブラック家の家紋入りだ。
「…あいつらしいな」
シリウスが苦笑しているとジェームズがカードを差し出した。
「なんか入ってたけど?」
カードをみてみるとベラトリックスの妹、アンドロメダと思われる字でメッセージが書いてあった。

こんな形でごめんなさい。このセーターは私が編んだの。
ベラが家紋をつけたのよ。あなたのために。
シリウス、どうかベラのこと怒らないでね?
お誕生日おめでとう。

シリウスはメッセージを読んで自然と笑った。
「アンドロメダのやつ…おせっかいだなあ」
そうシリウスが呟いているとピーターが脇から写真を差し出した。
「これ、僕から。僕らの、写真なんだけど…」
差し出された写真にはジェームズ、シリウス、リーマス、ピーターが屈託なく笑っていた。
「これ…。ありがとうピーター、大事にする」
シリウスは何度もその写真を眺めながらピーターにお礼を言った。
めったにお礼など言われないピーターは顔を真っ赤にしてううん、こちらこそありがとう、と呟いた。
そのときだった。

「ちょっとシリウス!」
赤毛の女の子が眉を吊り上げて談話室に入ってきた。
「なんだよ、リリー」
シリウスが吃驚しながらリリーを見つめた。
「どうして誕生日だって言わないのよ!プレゼントの用意大変なんだからね!」
ぷりぷり怒りながらリリーは白い百合の花を取り出した。
「プレゼント?おい、何する気だ?」
シリウスが怪訝な顔をしているうちにリリーは花に呪文をかけ始めた。
そして、白い花は白いマフラーへと変わった。
「え…」
突然起こったことにシリウスをはじめ、皆吃驚した。
「はい、これ。よかったら使って頂戴?」
リリーは微笑みながらシリウスにマフラーを差し出した。
「え、あ、あり、がとう…」
「うっわ!シリウスずりー!それ僕にくれ!リリーのマフラー!」
ジェームズが羨ましそうに白いマフラーを眺めて叫んだ。
「ちょっと、ジェームズ!それはシリウスにあげたんだからね!あなたがしたら許さないから!」
「ちぇっ!」
「まったく…!…じゃあ、おめでとう、シリウス」
そう言ってリリーは自分の部屋へとあがっていった。
たくさんのプレゼントに囲まれたシリウスは嬉しさと驚きで唖然としていた。
そんなシリウスを見て三人は笑った。
「めずらしい…」
リーマスが笑いながら言った。
「よっし!パーティーするぞ!」
ジェームズが思い立ったように言い出した。
「は?」
シリウスがまたもや唖然としているうちにジェームズは走って談話室から出て行った。
しばらくするとたくさんのご馳走をかかえてもどってきた。
「お、おい!」
「ちょっと厨房から失敬してきたんだ」
ジェームズはそれをシリウスの前に並べた。
たくさん食って良いぞー、と楽しそうにいいながら。
リーマスやピーターもお菓子を並べたりしてシリウスのパーティーをはじめた。
「おめでとう、シリウス」
リーマスが笑った。
「これからも、よろしくね」
ピーターも笑った。
そして、ジェームズは笑いかけながら言った。
「なあシリウス。お前、誕生日はいい思い出じゃないって言ってたよな。でもお前はこんなにプレゼントをもらって、すごい愛されてるよ。今年からは、ずっと俺たちがお前を祝うよ。お前がもう誕生日を忘れたりしないように…」

忘れられない誕生日は、この日から始まった。




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