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月へ唄う運命の唄
山小屋の出会い3

――かと思えば、今度はその笑みを一層深くしてそうかそうかとにこやかに頷き、何故か頭を撫でられる。

「あ、あの……?」

「おぉ、すまんすまん。気を悪くせんでくれ。いや何、噂に名高いかの"雷光の魔剣士"殿が、こんなに可愛らしいお嬢さんであったとは思わなんでのう。勝手な思い込みじゃが、もっとこう、逞しい見た目かと思っておったからつい……な」

「ご期待に沿えずちっちゃくてゴメンナサイ」

「まぁそう拗ねんでくれ。悪気はないんじゃ」

アルバさんはそう言いながら、あやすように頭を撫でてくれる。なんだかちょっと子供扱いされてる気分だけど、あまりににこやかなせいか悪い気はしない。
そうやって和やかに談笑していると、やがて少し離れた位置で扉の開く音が聞こえてきた。どうやら出掛けていた人達が帰ってきたようだ。

「おおどうやら戻って来たらしいの。起きられるなら居間まで来なさい、夕食にしよう」

そう言い残し、再び寝室を出たアルバさんと入れ違いでスタンが入ってきた。

「クノン!目が覚めたんだ!良かったぁ〜!!」

「なんだか随分待たせちゃったみたいでごめんね」

「謝らないでよ。お世話になったし、ここの人達はいい人だけど、任せきりにして無責任に女の子を一人置いてなんて行けないよ」

「ありがと。……そういえば、ディムロスは持ってる?」

『我ならここに居る』

問われて腰に提げていたディムロスを見せてくれるスタン。そのコアクリスタルからは、やたらと厳格そうな渋い声が聞こえてきた。

「あの時は挨拶してる暇なんてなかったけど一応、初めまして。あなたの暫定管理者のクノンです。"聞こえる"人だから普通に話してくれると嬉しいな」

『まさかとは思っていたが、やはりか。丁度いい機会だから質問させて貰うが、お前、何者なのだ?光る剣に"異質な"動き、極めつけにあの術。未だに信じられん』

武器に術はまぁ、派手だしわかりやすいから当然だけど…要所要所で瞬間的にしか強化してないから、ほんの僅かにだけど不自然になりがちな動きまで一目で看破しちゃうか。ディムロスのオリジナル、実は相当の使い手だったのかな。

「えと、すっごくザックリ簡単に言うと、剣の技以外は全部"巫術"っていうものだよ。私はそれを扱う事が出来る。あとは自己紹介ついでに補足お願い、姫」

そう言って、右手を左の腰に持っていき、引き抜く形で紫桜姫を取り出す。戦闘時ではないので柄だけだ。

『面倒な説明を丸投げしたわね、貴女。まぁいいわ。二人とも初めまして。私は紫桜姫という、この刀の柄に魂を移し替えた者。ディムロスさんをはじめとしたソーディアンに近い存在よ。違うのは、複製ではなく"本人"であること、機械的干渉は一切無く全て魔術的なもので構築されていることかしらね』

そして紫桜姫の説明は続く。クノンの剣技は巫術というもので肉体を強化することで初めて振るえる技であること。何故強化が必要であったか。巫術とは何か。
最初は何もない場所から突如出現した紫桜姫の宿る柄や、さらにそれが意思を持ちソーディアンと同じように話すことにただ驚いていたスタンとディムロスではあったが、その説明には真剣に耳を傾けていた。

『――こんなところかしら。ご質問はあるかしら?』

『俄には信じがたい話ではあるが、なんとか理解はした。我らが扱う晶術とは違う方式の術、か。汎用性が恐ろしく高いのは、力の源泉が理由であろうな』

『そうでしょうね。貴方達の晶術は、恐らくは戦時に開発されたせいもあるでしょうが攻撃系統に特化し過ぎている上、あくまで本来自らが持ち得ないレンズエネルギーという強力過ぎる外部の力を強引に引き出す以上、少々扱いが難しいのでしょう。対して巫術は自分本来の能力・特性に合わせて調整するから、色々小回りが利く。ただどうしても本人の容量に依存するから、純度依存のレンズと違って個人差も大きいのが欠点ね。どちらも一長一短かしら』

『うむ。……む?聞いているのかスタン!』

「ごめん、正直ついていけない」

どうやら少し専門的過ぎてスタンには難しかったみたい。エミリオとかシャルなんかは普通についていってたし、私もちゃんと理解はしてるからそれが普通って思ってたんだけど。そうでもない?


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あきゅろす。
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