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月へ唄う運命の唄
焔の約4

それからまた一週間が過ぎ、今日はあの"任務"の日だ。詳細はついさっき、国王への謁見中にて知らされた。

――「海を隔てた先の大陸、フィッツガルドにある、とある遺跡にて千年前の遺物が発見された。先日発掘作業が終わり、ついに運び出される準備が整った故、それを飛行竜ルミナ=ドラコニスにて城まで輸送して貰いたい」

そしてその輸送責任者兼、暫定管理者として客員剣士の私が指名された。
因みにエミリオはといえば、最近その遺跡の周辺を嗅ぎ回っているという盗掘者を捕まえる為別行動になっている。
……千年前の遺物というのは、シャルと同じくソーディアンだった。私が指名された理由としては、マスターとなる資質を持つ証拠として声が聞けるから。声が聞ける、というのは正式に客員剣士として任命された際に報告してある。その時に色々騒がれたようだったけど、当時の私やエミリオにはそんな事はどうでもよかった。
正直な所、今でも資質云々についてはどうでもいい。恐らくはシャルと同じように西洋剣だろうし、扱いにくい。第一、私には姫が居るのだから必要ない。暫定管理者に指名されたものの、マスターとして契約する気なんてこれっぽっちもないのだ。
それに、何故だかそれは私が持つべきではない気もしていた。多分、それは私が本来はこの世界の人間ではないからだと思う。資質はあっても、資格はない。
そんな想いを抱きながら飛行竜へと乗り込む。
外からの見た目はほぼ完全に空想のドラゴンそのものなのだけど、やはりその内部や下から外観を見上げた時には見えなかった背の部分は乗り物としての構造になっている。
これも千年前に作られたものらしいのだけど、現在では定期的に最低限のメンテナンスを行う事しか出来ず、新たに建造する技術自体は失われているらしい。
ソーディアンも大概だけど、これらを生み出した千年前の技術力は恐ろしい程に計り知れない。
少々有機的な内部の廊下を歩いて指令室へと入り、艦長や乗組員達と挨拶を交わしてダリルシェイドを出発した。

――そして数時間後。

私達は順調に遺跡にてソーディアンを飛行竜へと搬送し、十分な警戒を行った上でそこを出発した。私が見る二本目のソーディアンは、コアクリスタルこそ同じであるが、鍔や刀身については随分と違っていた。こちらはいかにもゲームに出てくる伝説の剣といった体だ。……あまり興味がなかったから、あくまでただのイメージだけど。
そして私達を乗せた飛行竜が順調に復路を行く中、ちょっとした異変が起きた。
十分な警戒をしていたにも関わらず、どうやって忍び込んだのかこの飛行竜内部に密航者が見つかったのだ。
私が乗組員に呼ばれ艦長の所まで出向くと、その密航者の男は伸びっぱなしのきらきらした金髪をぼりぼり掻いて、人の良さそうな顔に困ったような笑みを浮かべていた。

「だから、俺はただ兵士になりたくて。でも船に乗るお金がなかったし困ってて……」

「……それで都合良く現れた飛行竜に潜り込んだ、と。仕官する為に犯罪者になっていたら本末転倒でしょうに」

思わず溜め息が出る。この男、着込んだ鎧は成る程剣士、といった感じだが、何故か肝心な剣を持っていない。普通逆だろうとツッコみたくなるこの間抜けさを見るに、恐らく嘘はついてないと思う。
まぁ実際には密航がバレて捕まった際に武器を取り上げられたんでしょうね。どっちにしろその理由からしてお間抜けなのは疑いようもない。

「嘘をつけ!貴様、アレを狙ってきたのだろう!!」

重要な任務に緊張してか、すっかり興奮した様子の艦長は、私が居る事にも気付かずに金髪の男に蹴りを入れて怒鳴り散らす。どさくさに紛れて余計な情報与えちゃ駄目だよ。

「うわっ!?アレって何!?知らない、知らないって!!」


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あきゅろす。
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