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月へ唄う運命の唄
終結と、覚醒7

そしてフィンレイ将軍。自殺というには、あまりにも唐突過ぎる。堂々とし過ぎている。死に様が、壮絶過ぎる。
心臓を一突き。それも椅子に座ったまま、背もたれごと貫通し磔にするほどの力で。少し考えれば想像はつくであろうが、自分で貫くにしては威力が強すぎる。
それに少なくとも、数年間は誰にも動きを悟られることなく水面下で慎重に動いていた筈だ。…にも関わらず、最後はいやに簡単に黒幕として表に出ている。数々の証拠品にしたって、発見された場所からしていかにも"見つけてください"と言わんばかりの杜撰さだ。隠し場所としても雑過ぎる気がする。
まるで自分が黒幕ですと主張するかのように、過剰なアピールをしているように見えて仕方がない。

……何か、裏があるような気がする。

裏がある、といえば、アジトにあった装置だ。レンズ融合した子供は、自分たちが戦っていた部屋とは別の場所にあったコントローラーで操られていたらしい。
あの手術台(?)にしてもそうだけど、その製造者は誰?どこから手に入れた?あんな非人道的な機械、正規に流通していい類いの物じゃない。
なら自分達で作り出すか、どこかで裏から入手しなければならない筈。…けれど、そういった研究者は捕まえた組織の捕虜には居なかった。するとどこかから特注で入手した事になる。

……と、ここまで考えた所で、気付くとヒューゴ邸の門まで来てしまっていた。

玄関の前では、黒髪の優しげなメイド長が柔らかな微笑みを湛えて佇んでいる。その姿をリオンも見つけたのだろう。それまでの厳しい表情を一気に緩め、酷く穏やかな微笑をも浮かべながら玄関で待つマリアンの所まで先に歩いて行ってしまった。

少し驚いた。あんな顔もするんだ。

それまでの生活で、リオンはマリアンに対してただならぬ想いを抱いているような気はしていたし、二人きりでお茶などをしている時には、なんとなく間に入る事が憚られてしまうような雰囲気を醸し出していた。

『彼は、あの女性をとても大切に想っているのですね』

立ち止まり、二人を眺めるクノンにそれまで沈黙を守っていた紫桜姫が不意に話しかけてきた。

「みたいだね。私も、今ではお姉ちゃんみたいに思ってる人だし」

『そう。けど彼は、多分……』

「だろうね。でも二人がそれでいいなら、それでいいよ」

紫桜姫が言わんとしていた事はわかっている。きっとマリアンだってそれには気付いてる。それでも、私にとって二人は同じくらい大事な人だし、二人の事だから口は挟まない。

『貴女は、どうなのかしら?』

「私?…少なくとも、恋愛じゃないよ。まだ私にはよくわからないけど、マリアンに対してと同じ気がするから」

そう、とだけ返して紫桜姫は再び黙ってしまった。
気が付くと、リオンは屋敷へと入って行ったのだろう、彼の姿は見えずマリアンだけが相変わらず玄関で待っているのが見えた。

「ただいま、マリアン」

「お帰りなさい、クノンちゃん。…服、ぼろぼろになっちゃったわね。怪我は大丈夫?」

選んで貰った服は、激しい戦闘によって何十ヵ所も裂け、所々血が滲んでいた。

「あはは…ごめんなさい。大丈夫、痛いのは痛いけど、生きてるし怪我には慣れてるから」

「そういう問題じゃないわ。痕に残ったら大変よ?女の子なんだからもっと大切にしなきゃ。さ、手当てしてあげるから、早く部屋に入って」

少しだけ頬を膨らませて怒ったような表情を作ると、クノンの背中を押して強制的に連行されてしまった。
たまに見せるこういう愛嬌のある表情が、マリアンの可愛いところなんだよね。


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あきゅろす。
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