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月へ唄う運命の唄
終結と、覚醒6

そして事件は意外な結末を迎える事となる。
捕縛した組織の残党兵を引き連れて廃村から引き上げ、ダリルシェイド近郊の街道を歩いている時の事だった。
一人の伝令兵が、馬に乗り酷く慌てた様子でこちらに向かって来たかと思うと、思わず耳を疑うような情報を口にした。

「――七将軍、フィンレイ様が、お亡くなりになりました!!」

どういう事かと凄まじい形相で詰め寄るリオンを宥め、部下の兵達に捕虜を任せ少し離れた位置で詳しい話を聞くと、その経緯は信じがたいものであった。
七将軍である、フィンレイ=ダグ将軍が遺体となって彼の執務室で発見されたのは、リオン達がクノンの合図を受けてダリルシェイドを離れてから数刻ほどした後の事だった。
彼のお付きの補佐官が執務室から離れ、暫くして彼に書類のサインを貰おうと戻ったところ、自らの剣に左胸を貫かれ椅子ごと串刺しになっていたそうだ。
机の上には彼のものと思われる遺書が遺されており、一連の誘拐事件の詳細・実験の内容・実行犯として元直属の部下であるガルマを利用した事などが書かれていた。

何より信じられないのは、その目的だ。

現国王にかわり、自らが国を治めること。つまり、彼は今回のリオン達の任務でクーデターが露見し、それに対する言及や刑罰を恐れて自殺を決意した事になる。
現在国王には子供がなく、世継ぎがいない。そこでフィンレイ将軍に養子にならないかと要請が出ていた事は周知の事実である。だが彼はその話をあくまで断り続けており、国を支える将兵の一人である事を選んでいた筈。
それが、よりにもよってクーデターを目論んでいた。
そんな馬鹿な、と憤るリオンではあったが、早足で戻り城へと向かい、任務の報告もそこそこにフィンレイ将軍の無実を訴えるも、それは様々な証拠を理由に否定されてしまった。
彼の執務室から出たクーデター計画書や、例の屋敷にあった装置の図面、極めつけは実際に事を起こしていたのがまさしくガルマであった事。
不利な材料が揃い過ぎていた。

――こうして、この事件はフィンレイ将軍を黒幕としたクーデターとして処理され、解決に貢献したリオンは幾つかの褒賞を、クノンには正式な客員剣士としての地位を与えられる事となった。

肩を落とし城からヒューゴ邸へと帰る中、リオンはずっと何かを考え込んでいた。
時折シャルと何言か交わしては、再び眉間に皺を寄せて無言で歩を進める。
私はといえば、贈られた任命書と地位を示す腕輪を手に、少し先を行く彼の背中をぼんやり眺めていた。

今彼は、何を考えているのだろう。

そんなことばかりが頭に浮かぶも、話してくれないことには殆ど何も出来ない。彼が何を抱えているかがわからない以上どうしようもないのだけど…。

――そういえば。

リオンが考え込んでいる事について思う中で、いくつか気になる点があった事を思い出した。
ガルマ。彼の家族は、誰に奪われたのだろう。フィンレイ将軍の遺書の中に、確かに手を下したとの記述はあったらしい。だが、王国の中、将兵としては最高位の七将軍たる彼が果たしてそのような姑息な手を使うだろうか?少なくとも実際に何度か彼と面識のあったクノンのイメージとしては、まず有り得ない。
仮に人質を使うような卑劣な側面を隠し持っていたとして、果たして直属の部下にそうする必要はあったのだろうか?有り得なくはないが、考えにくい。


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