月へ唄う運命の唄
あなたと、――と。6
「どこって…リオンのやらしー視線の先?」
あまりに期待通り過ぎて面白いからついでに少しだけからかってみたら、遠心力でもげるんじゃないかというくらい凄い勢いで顔そらしてるし。
可愛すぎだよ。
「ば…!?お前、こっちは真面目に…!!」
「ごめんごめん。ちゃんと説明してあげる」
取り出した羽姫をまた鞘に納める要領で"しまいこむ"と、リオンの隣に再び腰を降ろして説明してやる。
元々、鞘に大量の護符を貼り付けていたのは、それを媒介にしてクノンの巫力を刀に微量に流し続け、力をマーキングするため。それと同時に鞘を充電池になるようにして流した力を逃がさずに絶えず溜め込むように設定していた。
元から意識のある妖のような(もしくは精霊などの高次元的な)存在との"召喚契約"と違って、無機物とは力と意思の相互交換が出来ない為に、まずはこちらから一方的に力を流して半妖に昇華してやらねばならないのだ。
そうして長い時間をかけて一段次元を昇ったものに契約の術式を施し、出来上がったものを式神の一つとして召喚・使役する。
「―…そうやって、式刀(チョクトウ)・羽姫が出来たわけ。…長々説明したけど、早い話がちょちょいと改造して魔剣にした、みたいな感じかな?ソーディアンとは似て非なるもの、みたいな」
「…だいたいだがなんとなく、その剣の状態がなんなのかはわかったが。ならば召喚されていない時は何処にあるんだ?まさか見えないだけで常にぶら下げているわけではないのだろう?それとも今のはただの幻で、実はやはり丸腰ということじゃないだろうな?」
「え、…あー…えーと…どうしても教えなきゃ、ダメ?」
結構、いやかなり恥ずかしいんだけど。
「携行しているという確実な保証がなければ安心して…というのも妙な話だが、お前を囮役には出来ん。少しでも生存確率を上げない事には危険過ぎる」
すっごい真面目な調子で返されちゃった。心配は素直に凄く嬉しいんだけど…ううん…仕方ないなぁ。普段はわりとつんけんしてて冷たい癖に、妙に心配性で頑固なんだから。
「ちょっとしか見せないからね。…それとやっぱり恥ずかしいからあまり見ないで」
「…?おい。何が恥ずか…」
彼が言い切るよりも早く立ち上がると、寝間着のズボンと下着を左側だけ、腰骨が見える程度にまで僅かにずらして見せてやる。
するとちょうどずらして晒した肌の上に、小指の頭ほどの小さい円に囲まれた、星型の赤と青の痣が一つずつ並んでいた。
「…終わり!!」
勢いよく隠すと、焦るようにして元通りに着直す。
数秒間だけとはいえ、こんな所を見せるのはやっぱりものすごく恥ずかしいし、とてつもなく顔が熱い。きっと間違いなく茹でダコみたいになってる。
「今の痣は?自然のものではないだろう」
やはりリオンの方も予想外であったらしく、多少は意識してしまったのか顔が紅くはなっているが、あくまで真面目に確認を取る。
「今の痣が、わた…ボクと羽姫との契約の印。普段はボクの体と融合する形で封印されてるけど、痣に向けて力を流しながら抜刀する動きを条件にして召喚出来るの」
あああ、恥ずかし過ぎて素が混じってるような気がする。上手く喋れないよ!
『なんだか便利ですね。確かにこれなら間違いなく武器を持ってる事はバレませんし、痣に万が一気付かれても、巫術を知るのはクノンだけですから変わった痣だな、で済んでしまいますよ』
…シャルの存在わすれてたぁ!
二人同時にびくりと飛び上がる。此処はリオンの部屋であり、無論その所有物であるシャルティエもこの場にあるのだ。
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