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月へ唄う運命の唄
あなたと、――と。3

元々、生体電気を強化して身体能力を上げる術式を使っていた事もあり雷属性の術とは相性が良いらしいクノンは、これまでも雷撃の矢や放電により麻痺を引き起こす術を開発しては順調に会得していった。
ただ、それ以外の属性については未だ晶術の方式と巫術の方式による折り合いがイマイチらしく下級止まりではある。
だがそれだけに、規模が規模であったため大きなミスも少なかったのだ。

…ところが、だ。

今回のコレは明らかに桁が違う。間違いなく、上級晶術に比肩する規模の威力。
ソーディアンマスターとして彼女よりも早く、長く術を研究してきた自分でも未だ漸く中級の扱いに慣れ始めたといった段階であるというのに、あっと言う間に追い抜かれてしまった気分だ。
しかも、しっかりと的のあった地点を中心に捉え、余波も必要以上に撒き散らす事なく、近くに居た自分や術者のクノン自身が傷一つないあたり大成功と言っていい。
平行して身体を鍛えさせた分、剣の方は動きや持続力に安定を見せ始めたが、技術的な進歩は殆どなかったのだが。

こいつ、実は剣士としてより術士としての方が才能があるんじゃないのか…?

「痛い…ものすごく痛い…リオンのバカ…」

とりあえず、もう一撃見舞っておくか?こいつは。

「なにもそんな全力で殴らなくてもいいじゃん。成功したんだしさ。」

うぅ、まだ頭がじんじんする。絶対たんこぶ出来てる気がする。

消滅してしまってはいるが、的のあった地点を指差しながらリオンの方を振り返り抗議の目を向けると、何故か彼は不機嫌気味に眉間に皺を寄せていた。

「あ、えと、確かにちょびっとだけやり過ぎたかなーって気もしなくもないけど、ホラ、モンスターとかいっぱいわらわら〜って出てきた時に一掃出来たらいいなって思ったんだけど…」

変わらない不機嫌な表情に反省とメリットを慌ててアピールしてみるも、相変わらず彼は無言。

…どうしよう。

と、違う意味で頭を抱えそうになったクノンだが、そこに漸くリオンが口を開いた。

「この術はもう、名はあるのか?」

「え?…うん、建御雷神(タケミカヅチ)ってつけたけれど。」

「…そうか。名を付ければそれをイメージとして具現化と制御がしやすくなる、僕の教えに忠実だな。」

それだけ言うと、彼はシャルを腰に戻し踵を返す。

「え、どこ行くの?」

「城だ。先程の落雷による被害は何処にもない、と報告せねばならんだろう。それとその原因もだ。」

だからお前も説明しに着いてこい、と桃色のマントを翻して出口へと歩き出してしまう彼を慌てて追いかける。

グラウンド、あのままでいいのかな…と少し心配になるが、それよりもリオンが不機嫌になった理由の方がなんとなく気になった。


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あきゅろす。
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