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月へ唄う運命の唄
教えてリオン先生3

「…晶術の事か。教えた所でソーディアンを持たないお前には使えんぞ」

「そう言わずに、ね?」

両手を合わせてお願いしてみる。…と、短い溜め息が聞こえた。見れば脇に置いてあったシャルを手に取り、いかにも仕方ない、といった表情を作るとクノンに向き直る。

「…そもそも晶術というのは、僕のようなソーディアンマスターにしか使えないものだ。ソーディアンに付与された属性に従い、精神を集中させ詠唱に含まれる言葉を媒介としてコアクリスタルから力を取り出し、現象を起こす。力の流れを掴み取る事と、集中を乱さない事が鍵だ」

『ちなみにですが、僕に付与された属性は基本の"地"とサブに"闇"の二種類になります。…それで、それを聞いてどうするんです?』

シャルが疑問を投げ掛けると、同じ事を思ったのかリオンも視線で問うてくる。

「前に話した、ボクの巫術もね、実は似たような現象を起こせるんだ…本来は」

「本来は?」

「うん。だけど、剣と違って教えてくれる人が居なくて、基礎中の基礎しか使えないの」

例えば剣を使う時の身体強化や、ちょっとした伝言術くらいね、と付け加える。

「だから、似たような事が出来る晶術のコツを教えて貰えれば、上手く利用出来ないかなー…なんて思ったり…」

チラ、とリオンの眼を見ると、少しだけ困惑したような色が見て取れた。

「それは、僕に術の師になれという事か?」

「ダメ…かな?」

「…その前にお前は、まず自分の体自体を鍛えるべきだと思うが」

少々の間を空けて返ってきた返事はクノンの予想とは少し違っていた。

「お前は戦闘時に身体を強化して闘う。…が、その強化の負担に長くは耐えられず、終われば倒れる。毎回ではないにしろ、これでは不安で仕方ない。だから術の指導と平行して、お前の体を徹底的に鍛えてやる。……文句はないな?」

彼の顔をよく見て見れば、頬がほんのりと紅く染まっている。その様子に思わずくすりと笑みが漏れてしまい、それに気付いたのかぷいと顔を横にそむけられてしまった。

照れてる…のかな?なんだか可愛い。言ったら殴られそうだけど。

『坊っちゃんてば、素直に教えてあげると言えばいいのに。頼りにされて、実は嬉しんがぎゃばっ!!』

…あんな風に。

余計な事を言いかけたシャルがリオンに鉄拳制裁を受けている。…それにしても、クリスタルをあんな全力で殴って痛くないんだろうか?

「…ごほん。とにかく、明日の朝から始める事にしてやる。…が、僕からも少し訊きたい事がある」

わざとらしい咳払いをしつつリオンがこちらに向き直る。

「以前お前が初めて実戦に出た時の事だ。あの時、お前は現場を狩り場にされている、と"彼らが教えてくれた"…というような事を言っていたな。それに戦っている時に、青白い火花のようなものがお前から迸っていたように見えたが…どういう事だ?」


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あきゅろす。
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