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月へ唄う運命の唄
木陰4

「そして先程も言ったが、この剣の声を聞き、十分に扱うには資格……特殊な才能と言い換えてもいい。それが要る。故にお前は非常に類い稀な存在だという事になる。知っている限り、僕の他には声を聞ける人間はお前しかいない」

「成る程……だからあの時驚いてたんだね。ボクもいきなりだったからびっくりしたけど」

何せ人の声が直接頭に響くだなんて、滅多にない経験だし。……アレとかコレ以外は。

元の世界での、とある数々の経験を思い出すには少々背筋が寒くなる為、途中でそれを放棄する。

「さてソーディアン……シャルに関する説明はこれで終わりだ。次は僕がお前に質問をする」

ここからが本題、とばかりに鋭い視線をクノンに突き刺すリオン。

「先日の話で、お前とヒューゴ様との繋がりや此処に居る事情はだいたい把握した。ヒューゴ様からも直接説明されたからそのウラも取れている。……だが……まず一つ確認する。お前は"どっち"だ?」

どっちだって……まさか、もしかして、もしかしなくてもバレてるのかな?

"質問する"ではなく"確認する"と発言した辺り、ほぼ確信しているのだろう。誤魔化すだけ無駄だと悟る。

「……騙しててごめんね。ボクは女の子だよ。此処に保護された時、剣士として生活するために、そうするようにってヒューゴ様に命令されてて」

「剣士として生活するならば、評判や安全面を考慮して女である事は隠した方が良い……か」

ヒューゴによる命令の意図する所をいともあっさり看破したリオンに、少々驚くクノン。だが、こういう世界に生きる者ならば、このような策もまた常道なのだろうと納得する事にする。

『でもなんだか勿体無いですよね。クノンってかなり整った顔立ちしてますし、女の子らしく髪だって綺麗ですしね』

シャルティエがクノンを見た素直な感想を口にすれば、そんなことないよ、と苦笑いで返す。

「では次からは質問だ。あの時熱があるのかと聞いたら、お前は"反動"と答えた。あれはどういう意味だ?」

あの時……熱……、あ。

「あれは……うん……と。言わなきゃダメ?」

上目遣いに困った笑みを浮かべながら恐る恐る訊いてみれば、じっと無言で見つめ返された。僅か細められた鋭い視線からは、当たり前だ、と無言のプレッシャーが発せられている。
はぁ、とため息を一つ。クノンはおもむろに自分の右目に指を軽く突っ込むと、楕円形の物体――カラーコンタクトだ――を目から外した。それはちょうどクノンの瞳と同色に塗られている。

「……それが今の質問とどういう…………っ!?」

怪訝な表情で質問を重ねようとしたリオンが息を呑んだ。クノンの指に乗せられたカラーコンタクトから再び彼女の顔に視線を戻すと、信じられない事に彼女の右の瞳が、深海を思わせる深い青色に染まっていたからだ。左はといえば、普段通りの茶色のまま。

「……これが、答えだよ。右目の色、変わったでしょ?これは"蒼巫の証"っていうんだって。ボクには生まれつき、ちょっと変わった力があってね。その力を使う時、右目だけ色が変わるの」

やはり少し困った表情で続けるクノンの声は、どこか暗い色を帯びている。


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