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月へ唄う運命の唄
欠けた月は想いを映し5

「ごめん、どうにも難しくて。各属性使えない事はないけど、今みたいに強力なものは詠唱が必要になっちゃう」

「まぁあれだけ強力な術ならばそれも仕方なかろう」

…それに雷と風属性ならばこれ以上に強力なものを殆ど無詠唱で使える分、他の弱点を補って余りある。それだけで十二分に天才と言える領域だからな。誉め過ぎると調子に乗って乱発しかねんから言わんが。

「にしても水のない所だし、水筒の水を媒介にしてても氷を生み出すのって思った以上に疲れる。その点ルーティは凄いね、楽々と撃っちゃうんだもん」

「ふふ〜ん、凄いでしょ。もっと誉めてもいいのよ?」

さすがにアレ程わかりやすく馬鹿丸出しにならないのは救いだな。

「さてモンスターどもも片付いた。急ぎカルビオラを目指すぞ」

「了解」

――遡る事数時間前。船での長旅を終えたクノン達はカルバレイス大陸の港町、チェリクに着港した。到着して早々、予定通りにまずは当地の人間から情報収集を試みるも、閉鎖的な彼らからは情報を得る事は叶わなかった。
その為、オベロン社カルバレイス支部のバルック基金オフィスへは自力で辿り着く他はなく、思った以上に時間をかけてしまった。

そうして漸く到着したオフィスにて、支部を統括するバルック=ソングラム氏から情報を得ようとするも、こちらも空振りに終わってしまう。…が、何か手掛かりがあれば報告を、という協力を取り付けオフィスを出ると少し先んじて外へ出ていたリオンが情報屋から神官らしき者達が巨大な荷物をカルビオラ方面へと運び去ったという情報を購入しており、これを追撃する為砂漠へと足を踏み出したのだ。………そうして、今漸く首都・カルビオラへと一行は到着を果たした。

「ここがカルビオラ?やっと着いたのね。あっつ〜〜」

すっかりへばりきった様子のルーティは、慣れない陣形での戦闘もあってかもはや限界、といった感じだ。私達が街の入り口で一息ついていると、住人らしき女性が声をかけて来た。どこから来たのかという問いにフィリアがチェリクからと答えれば、顔を綻ばせて労いの言葉をかけてくれる。だが、スタンがストレイライズ神殿の場所を訊ねた途端に、余所者の神なんぞに用はない、北の方にあるがあまり関わるんじゃないよと口調厳しく忠告を残して去って行ってしまった。

「前に、アイルツ司教様に聞いた事があります。カルバレイスは独自の信仰が強くて、布教に苦労しているのだとか」

少しだけ困ったような調子で事情を教えてくれたのはフィリア。

「…独自の信仰、ね…」

『宗教なんて、そんなものよ。土地が変われば、信仰の対象も変わる。どの土地の人だって、自分達の信じる神が一番なのだから、他に神が居るからといってそう簡単に元の信仰は捨てられないわ。唯一神を信仰するならばそれは尚更よ』

カルバレイスの祀る神が何かは知らないけれど、信仰の対象はその土地由来のものになることが多い、そして住人の閉鎖的な気質やバルックさんから聞いたその原因となった出来事を考えると、ここの神は…

「奴らが何を信仰しているかは今は関係ない。北にあるという神殿を目指すぞ」

エミリオの言葉で我に還った私達は、とにもかくにもストレイライズ神殿を目指し街の北へと歩を進めることにした。

そうしてほどなくして、ストレイライズ神殿へと辿り着いた私達。けれど、白昼堂々大人数で押し掛けるわけにもいかない。下手に目立って警戒されてはグレバムの捕縛も神の眼の奪還も難しくなる。そこで、まず私が一人で入り口の神官に近付いてニ・三質問ついでにカマをかけてみると、見事にボロを出してくれた。
笑顔を作って礼を言い、離れた位置で身を潜めていた仲間達の所へと戻る。

「どうだ?」

「真っ黒。ここに彼らが居るのはほぼ間違いないと見ていいと思うよ」

「そうか…だが今は動くのは得策ではないな」


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あきゅろす。
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