月へ唄う運命の唄
第四のソーディアン6
そうして暫く、少々緊張感に欠ける雰囲気の中襲い来るモンスター達を蹴散らしてラディスロウの中を突き進んでゆくと、やがて少し大きな扉の前へと到達した。
『ここは…司令室ね』
『うむ、ここが艦の最深部だ』
アトワイトの声にディムロスが同意する。
「漸く辿り着いたか。よし、入るぞ」
エミリオの声に頷き、扉を開いて足を踏み入れる。その内部はいかにも司令室、恐らくは当時の地上軍の科学の粋を集めたと思われる機械群が設置され、正面最奥部には巨大な壁面モニターらしきものまでがある。
そしてその少し手前、少々背の低い高さ十数センチといった円柱状の台座に、随分と幅広の刀身がついた大剣が突き立っていた。クレイモアと分類される両刃の重量剣によく似ている。割とシンプルなデザインの鍔の中心には、透明に輝くクリスタルが嵌め込まれていた。
『選ばれし勇者達よ、よくぞここまで来た。』
『クレメンテ老、悪ふざけは大概にして貰おう』
ソーディアン特有の脳内に直接響く老人の声。かなり年配ととれ、かなり飄々とした調子だが、しかしその内側にはどこか貫禄のようなものが滲み出ていた。
そしてそれは正面にある大剣に嵌め込まれたクリスタル――コアクリスタルであろう――から発せられている。つまり、これが四本目のソーディアン・クレメンテであった。
『久しぶりに会ったのに、ディムロスは頭が固いのう。それに比べアトワイトは相変わらず可愛らしいのう、剣になっても。…それに、』
?なんだろう、妙な視線みたいなものを感じる。
『若い女子(オナゴ)が六人…いやここに居るのは五人じゃな。来てくれるとは、いい目の保養になるの』
「は?」
どう考えても今ここに居る人で女性は私、ルーティ、マリーの三人。入り口に置いてきたフィリアを入れても四人だ。仮にソーディアンであるアトワイトを入れるとするなら五人となるが…まさか。
『まさか初対面でいきなり存在を看破されるとは思わなかったわね』
やっぱり、姫も数に入ってるんだ。今私、武器持ってないのに。
『ほっほ、お主のような可憐な女子を儂が見落とす筈がなかろう。…多少ちんまいのが気になるが。その落ち着いた口調はキャラ作りか何かかの?見た目の年齢とは随分かけ離れておるのう』
「『はい?』」
『…あまり考えたくはないし認めたくはないけれど。貴方まさか私の姿が"視えて"でもいるのかしら?』
『見えとらんが、儂は他のソーディアンと比べると少々特別でな。通信、知覚・補助系の機能が充実しておる。…好みもあって多少大きくなってしもうたがな。声質や響き方等から大まかな年代や容姿の特定が出来るんじゃよ。背伸びは似合わんぞ?』
『…クノン、この爺を今すぐへし折りなさい』
「ちょ!?」
「待て。そいつを折られてはこんな所にまで寄り道した意味がなくなる」
突然の姫の発言にびっくりしていると、エミリオから静止の声がかかる。…なんというか、一癖あるお爺さんだな…。
『物騒じゃのう…あまり怒ると成長せんぞ?』
『なっ!?ど、どこ見て言ってるの!?というかその手の動きを今すぐやめなさい!!貴方、そんなに死にたいのかしら…!!』
『儂のオリジナルならとうの昔におっ死んでおるが』
『屁理屈を…!!』
『もう一度言わせて貰うが老、悪ふざけは大概にして貰いたいのだが』
未だにぎゃあぎゃあと騒ぎ立てる姫を無視して、ディムロスが半ば呆れながら割って入ってきた。というか、姫がここまで感情を露にして騒ぐのも珍しい。そんなに自分の姿を知られたくないのだろうか。
……………………………………………ていうか、ちっちゃいんだ。
クノンのちょっとした共感や同情はさておき。そうして話はここまで来た理由や経緯についての本題へと入る。
――『神の眼、か…悪い予感はしておったが。儂もここでのんびり眠っておる場合ではないのう。』
そのまま私達は、クレメンテのマスターを誰にするか、という議論に入った。
「合流出来たはいいけど、問題は誰が使うのか、だよね」
「そんなの、この中でまだマスターになってないのって、クノンだけだろ?」
「わ、私!?私はダメだよ。大きすぎるし、使えないよ」
『私からも却下。こんな好色爺に可愛いクノンを触らせたくないわ。汚らわしい』
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