[携帯モード] [URL送信]

夜空を纏う銀月の舞
team.2

時刻は夕方。私達が互いの秘密を共有することで距離を縮めて、風が少し冷たくなってきたために船室へと場所を移動し談笑していた時だった。突然、何か巨大なものに船が激突したかのような震動と、轟音が響いたのは。

「っ!?何ごと!?」

「状況を確認するぞ!」

「んっ!」

私達は万が一に備え各々武器を手に、船室を飛び出して甲板へと走る。その中、突然の事態に船内の乗客達は皆恐々としており、廊下を右往左往としている。
そんな彼らに対して私達は、通りがかりがてら客室へと避難して船員の指示を待つように、と呼び掛けながら先を急いだ。

「主だっ!デビルズ・リーフの主だぁっ!」

「ヒィイイイ!お、おた、お助けぇえ!オイラまだ死にたくねぇよぉ!!」

「ガタガタ抜かすな!!とにかく船長に伝えて来い!それから見張りの人数を増やせ!船体に損傷がないか調べろ!急げ!」

――状況は予測よりも悪かった。
海の魔物……それも、巨大化し凶暴化したタイプに船が捕捉されてしまっていた。
デビルズ・リーフの主。
それは何年にも渡り数多の船を海賊・貨物・旅客問わず沈めてきたとされる怪物である。……それはつまり。

「まずい。多分こいつ、"餌の取り方"を知ってる」

「なにっ!?」

「あの長い体に捕まって横転させられたらコトだし、だからといって船員さんが叫んでたみたいに破壊されても終わり。……フィオ」

「あいさーっ!私はとりあえず、他の船員さん達と一緒に船体……船底の方を中心に見てきますね!」

「お願い。キミはカイル達を探して来て。……――ゲイト」

言うなりユカリの姿が文字通りに消失した。かと思えば、次の瞬間には遥か前方・魔物が大量に集中している舳先にて刃物……刀を手に敵を次々と斬り飛ばしていた。離れた高い場所には魔法で、近くの低い位置では刀にて。その戦闘力はかなりのものだ。

「刀使い、だと?それも今のは……空間移動?」

――いや、出身を考えればなんら不思議はない。どちらの時代においても、だ。

「ほらほら、ユカリさまが可愛くてカッコイイからって見惚れてちゃダメですよ?私達も行動しなきゃっ」

ばん、と背中を叩かれることで我に還る。……そうだ、呆けている場合ではない。
僕はその場でフィオと別れると、カイル達を探して再び船内へと飛び込んだ。

「――おいお二人さん!そんな所でイチャついてる場合じゃねぇぞ!」

「あ、いや、違うんだリアラ!そんなつもりじゃなくてっ……うわぁああ!?」

仲間達を探して船内を駆け回っていると、何やら廊下で蹲りメソメソとしていた馬鹿が居たので蹴り飛ばして回収。後にまだ回っていなかった物見台の下まで来れば、カイルとリアラは二人並んで台の上にて談笑していたらしかった。そしてたった今、カイルは襲ってきた震動に揺すられてバランスを崩し、墜落した。

「カイル、大丈夫!?」

「心配要らん。バカは頑丈と昔から決まっている」

「なんだよ!バカバカ言うなよなっ!」

惹かれている女からの声のおかげか、もしくは僕の皮肉の効果か(どちらかなぞ心底どうでもいいのだが)。高所からの落下による痛みを全く感じさせずに飛び起きて憤慨している。

ほらな、あいつの息子が頑丈でない筈がないんだ。

「はいはい喧嘩はあと!」

「ユカリが先行して魔物と交戦している。……急ぐぞ!!」

――しつこい。

と、いうより。様子が妙だった。確かに魔物の先端部分には牙の生え揃った口のようなものがあり、ともすればこれらが群れをなして船へと絡み付こうとしているようにも見える。が、予測が正しければ、これらは紐状のワームの群れなどではなく、ある一個体から伸ばされている触手に過ぎない筈。体が伸びてくる方向は根元が同じであるし、"主"と呼ばれるものが集団を指しているとは考えられない。
で、あるのに。先程からもう何十回(体)も斬り飛ばしているにも関わらず、一向に本体が姿を現さない。
もうかれこれ10分は無駄な抵抗を続けている。

「ぜぇ、ぜぇ……ちょっと、きつい……かも……」

少し上がっていたテンションに任せて剣と術の併用で迎撃していたが、体力が底を尽きかけていた。子供だった前世の方が、倍は体力があった気がする。

「やばい、トシかな……」

「お前は僕より年下だろう。楽して怠けているからそうなる」

私を横から捕まえようと伸びてきた触手を横薙ぎに両断する隙を突いて、正面から突っ込んできた触手への迎撃が遅れた。そこへ遮るように割って入ってきた黒衣の少年から背中越しに嫌味が飛んでくる。

「いつもすまないね」

「ふざける余裕があるなら上出来だ。……よく持ちこたえた。前衛は任せろ」

「お願い」

刀を杖に変化させ後方へと下がる。入れ替わりにカイルとロニが左右後ろから私を追い越して骨っことともに触手へと飛び掛かっていき、リアラは私と並んで詠唱を開始した。
口に体力回復のアップルグミを放り込みつつ、同時にシルフィバレットで砲撃し牽制。ごくりと飲み込んだタイミングで詠唱の終わったリアラが晶術を解放・続き自分も詠唱を開始。

「スプラッシュ!――逃がさないっ!クラッシュガスト!!」

「シャイニングスピア――爆ぜよ《神爆雷》トーラス・ノヴァ」

中空から発生した、滝のような水流の鎚が叩き潰すように敵の頭へと激突。続き衝突により弾け、飛び散る水滴が急速に冷却されることにより無数の氷礫となり、さながら弾丸のように肉体へと風穴を開けていく。さらにそこへ光の槍が何本も突き刺さり、貫通した場所から強力な雷撃が発生。さらにそのまま引火するようにして大爆発を引き起こす。
水と雷の連携効果により、その威力は従来よりも桁違いに跳ね上がっていた。


[back*][next#]

2/6ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!