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>>02

「いらっしゃいませ。本日は我が社へ如何なるご用ですか」

「ここで働いていたラフィン・クロフトとシエラ・クロフトの墓を教えて頂きたいのですが……」

「そ、それは……」

「言えない理由でもあるのか?」

言い淀む受付の男にシオンが冷たく言うと、男はますます泣きそうな表情になった。

「わ、私は入ったばっかで何も知らないんです」

「じゃあ、知っている方に会わせていただけますか」

「しかし……」

「どうかしたのかね、オルフィス君」

受付で男を詰め寄っていると杖をついた老人が受付へとやって来た。

「あっ、社長。こちらの方がラフィン・クロフトの墓を教えて欲しいそうなんですが、社長はご存知ですか?」

「ラフィン・クロフトだと……」

「知っているのですか」

その声に反応し社長が恐る恐るエリックに視線を移すと驚きの表情を浮かべ、小さくラフィンと呟いた。

「お、お前達はラフィンとどういう関係だ」

「関係を持っているのは私です。私の名はエルリック・アッシュ・クロフト。ラフィン・クロフトとシエラ・クロフトの息子です」

その言葉に老人は腰を抜かし、這うようにエリックに近づいた。

「あ……あ、悪かった。私が悪かった。まさかあそまでアルタイルの薬が良いとは思わなくて、つい欲に眩んで……そのままラフィン達を……」

「謝罪の言葉など聞きたくない。早く両親の墓を教えて頂きたい」

自分の足にすがり付き謝罪の言葉を並べている老人を冷たい眼差しと言葉で切り捨てると、老人はますます恐怖で青くなった。

「ラフィンとシエラの墓ならこの先の頂上にあるはずだ」

「分かった。迷惑を掛けて済まなかった」

「あっ……」

踵を返して立ち去ろうとしていたエリックを受付の男が呼びとめた。

「まだ、俺達に用があるのか?」

「いえ、もしよろしければその山まで送り致します。我が社の過去のお詫びとして」

「……では、お言葉に甘えるとしよう」

その言葉にエリックは暫く考え込むと相手の申し出を受けることにした。

「それではご案内します」

オルフィスが老人から地図を受け取るとエリック達を馬車へと案内し、エリックの両親が眠る山へと向かった。

「社長の地図が正しければここで確かな筈です」

「助かった。歩いていた日が落ちていたところだ。これはほんの気持ちだ受けとって欲しい」

そう言ってエリックはいくらかの金額が入った袋と一つの薬瓶をオルフィスに渡す。

「そんな、いただけませんよ」

「貰っといたどうだ。多分、幾らかは先ほどの詫びだろうからな」

「そうだ。先ほどのアレは少しやりすぎた。取り敢えず薬の方は栄養剤だ。受付は結構、辛いだろうからな」

「ありがとうございます。気をつけてくださいね。中国もまだ物騒ですから」

オルフェスはエリック達に一礼すると会社へと戻って行った。彼の馬車が見えなくなるとエリック達も山を登り始めた。山といってもそれほど高くなく、数十分歩いただけで頂上に辿り着いた。

そこには墓石が一つひっそり建てられており。その墓石にはラフィン・クロフト、シエラ・クロフト ここに眠ると刻まれていた。

「これがお前の両親の墓か?」

「そうみたいだな。父上、母上。遅くなってすみません。中々時間が出来ず今日、やっと時間が出来ました。ご心配なさらずとも私はなんとかやっています。それと今日父上から薬を売っても らっていた老人にお会いしました。そして、その老人からオルゴールを預かってきました。父上 達の為に作った物だそうです。どうか安らかにお眠りください」

エリックは墓石の前に花束とオルゴールを置き、ひっそりと祈りを捧げる。それをシオンは黙って見ていた。

暫く祈りを捧げていたエリックだが何かに気付いたのかシオンの側まで下がると臨戦体制をとった。シオンもエリックと同じタイミングで隠していたアルヴァイオを引きぬき構えていた。

「動物じゃないよな、この殺気は……」

「あぁ。そこに隠れているのは分かっている、出てきたらどうだ」

エリックが袖からナイフを取りだしそれを草むらに目掛けて投げ付ける。すると、二人の男が草むらから飛び出してきた。

「ふ〜ん、エリックは気付くと思っていたが……そっちの女もなかなかやるじゃねぇか」

「全くだ。エリック、裏切り者にしては中々良い身分だな」

「黙れ! ジーン、アルバ! お前達の狙いは私だろ。彼女に手を出すな!」

エリックが殺気のこもった目で二人を睨み付けるが二人は愉快そうに笑うとアルバと呼ばれた男が呪文を唱え始める。

「ククク、そうはいかねぇよ。俺達も楽しみてぇんだ。アルバ俺がエリックな」

「……という事は俺が女か」

つまらんと、アルバが呟くと同時に突風が吹き荒れ、頂上にいた筈の四人の姿が消えた。

「さぁ、楽しもうぜ! エリック」

突風がやむと辺りには自分と目の前にいるジーンしかいなかった。シオンとは別の場所に飛ばされたらしい。

「お前を倒してシオンの元へ行かせてもらう」

ナイフを数本取り出し構えをとり、ジーンの様子を窺う。

「はん、行かせるかよ」





ACT.25 両親、最期の地にて END



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