SIDE 双子 「なんで、こんな切れ目の入った服を着なきゃならないんだ!大体、こういう系の服は目が痛くなる! チカチカするんだよ!そ、それに、こんなヒラヒラしてたら、見えちまうじゃねーか!」 シオンはひたすら文句を並べるとダンッ!と足を鳴らした。 「え〜……てゆーかさ、メイド服まで着たんだからさ〜、いまさらって感じだよねぇ〜。それに見られたくなかったらスパッツってやつがあるんだし、チカチカするのは仕様だし。因みにこの切れ目はスリットっていうんだよ?」 そしてその文句を難なく流すリオン。ギャァギャァと言い争う様は中の良い姉弟に見えるのだが……。 「メイドに白のワンピースに、余計なフリルのつきまくった服に、しまいにいはこれか!? 俺は着せ替え人形じゃない!」 聞き様にはシオンが可愛そうなしないでもない。 「なー、戒斗。何であいつらがいるんだ?」 大きな紙袋を抱えたヴィオ首を傾げながら隣にいる戒斗に尋ねる。 「知るか……あの二人に聞け」 「わかった、お〜い! シオン、リオン!」 戒斗はウンザリしたように溜息を吐くと、隣でヴィオが二人の名を呼んだ。すると二人は合わせたように同時に振りかえった。 「遅かったな」 「遅かったね」 これまた二人はあわせたかのように同時に言った。 「なー、何で二人がここにいるんだ?」 ヴィオは不思議そうに二人に尋ねた。 「カンコーってやつだよ」 「俺はコイツのお守だ」 リオンはいかにも『ニヤニヤ』という言葉ピタリと当てはまるような表情を浮かべながら、シオンはウンザリしたような表情でそれぞれ言ってきた。 「てゆーか『お守』って何さー、シオ姉ー」 ブーブーと子供のように不平を漏らすリオン。 「当たり前だろうが……お前はほっとくと何をしだすか、わかんねーからだ。だいたいあの時だって血だらけになってたじゃねぇーか」 また、兄弟ゲンカが始まった。そんな二人を見て戒斗はこっそりと溜息をついた。 「おまえ等、服を買うならさっさとしろ、周りの人間に迷惑だろうが……」 「結局、全員ここにいるわけだが……」 近くにあった喫茶店に入りそれぞれ飲み物を注文すると戒斗がそう切り出した。 「僕達はたまたまあの店にいただけだよー?」 そこへ丁度、注文した飲み物が運ばれリオンはニコニコと一見、悪意の無い笑顔を浮べながら飲み物を受け取る。 「何で俺が、こんなの着なくちゃいけねぇんだ……」 そんなリオンの隣ではシオンが赤い顔をしながらブツブツと呟いていた。因みに今リオンに押しきられたのかチャイナドレスを着ている。 「なぁ〜戒斗、これからどうするんだ?」 「俺は、日本へ行く……エリックは中国だったな」 「えぇ」 話を振られたエリックは地味なチャイナ服を身に纏い、普段掛けていた眼鏡を外していた。 「あれ? エリック眼鏡掛けなくてもいいの?」 「この眼鏡、伊達なんです。だから掛けなくても大丈夫なんですよ」 エリックは、のほほんと笑うと一口紅茶を啜った。 「で、問題はお前達だ。どうするんだ?」 「どうする?シオ姉」 「エリック、俺も中国へ行って良いか? こんな格好では日本へは行けないだろうからな」 吹っ切れたのか、あははと苦笑いを浮べながら向かいに座っているエリックに尋ねる。 「別に構わないですけど……つまらないですよ。ただの墓参りですし」 「構わん」 「シオ姉は中国に行くの? じゃあ、僕は日本へ行こう。宜しくね戒斗さん」 満面の笑みを浮べるリオンに戒斗は眩暈がした。 「決まったな、じゃあ、行くか」 それぞれ頼んでいた物の代金をテーブルに置くと、店を後にした。 「ここからは別行動だな」 「そうですね」 「じゃあ、ここで解散」 リオンの一言で戒斗達は日本へ、エリック達は中国へと向かっていった。 ACT.23 下準備、完了 END |